通説編第3巻 第5編 「大函館」その光と影


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第1章 露両漁業基地の幕開け
第1節 区政の展開と政治潮流の実相
1 自治区制の進展と区長選任事情

自治区制の出発

函館区長の選挙

函館区役所移転問題

区内各紙連合の演説会

函館区民大会の決議

区役所の新築

林悦郎区長の辞任と政争の影

任期半ばで退任する区長たち

地元区長も途中退任

北守助役の区長就任

渋谷区長選任問題

党派の軋轢と区長問題

区役所の機構とその変遷

役所の吏員

区役所の新築   P25−P26

 3月25日、明治35年第1回の区会が開催され、13件の議案が上程された。その内第5号が「区役所敷地寄付ノ件」で、第13号が「区役所位置変更の件」であった。1月に確認された通り相馬哲平から区役所敷地として、豊川町29番地および33番地の404坪余(金額1万1988円余)と現金3011円余の総額1万5000円が寄付され、同時にその寄付地に区役所位置の変更が議決されることとなったのである。区会での提案質疑の概要は次の通りで、先に第13号議案が上程されている(明治35年「第一回函館区会議事録」)。

(番外北守助役本案を説明して曰く)第二〇回区会に於て決定せし如く病院焼跡へ建設の筈なりしは、当時適当の位置に於て敷地を得ず、止むを得ず仮りに建設の見るに外ならず、然るに今回区内相馬哲平より敷地寄付の事あり、而して其位置は稍区の中央に位するを以て前議を変更せんとす、希くは本案賛成あらんことを
(松山吉三郎)第二〇回区会に於ては竹内議員の動議にて病院焼跡地に決定せるも、当時同議員の建言中に若し適当の地を得ば之を変更するの言質ありて一同これに賛成せしやに思ふ、本員は本案に賛成なり


新築された函館区役所(函館市制実施記念写真帳』)大正12年刊
 この後に遠藤と竹内が賛成し、採決の結果満場一致で原案が通過した。引き続き第5号議案に移り、これもまた原案通り可決された。この時区役所新築費も補正し、6月13日請負契約を行なって、年末完成の計画で工事に着手した。11月16日付けの「函館公論」には「大略竣工済、今や外面に白色リサイド(防火ペンキ)塗り其他一部の造作」を残すのみとあり、12月21日には開庁式が挙行された。林悦郎区長の式辞には「区費多端の際に拘はらず五万七千余円の巨費を投じて此適当の位置に広大堅牢なる庁舎を新築」(12月23日付「函館公論」)とあった。翌36年1月6日から新庁舎で執務が開始された。
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