通説編第3巻 第5編 「大函館」その光と影 |
|
第3章 戦時体制下の函館 函館市立工業学校の設置 |
函館市立工業学校の設置 P1200−P1201 昭和16年2月26日「函教第200号」による申請に対し、同年3月10日付文部省告示第276号は、「工業学校規程ニ依リ左記実業学校(夜間授業)ヲ設置シ昭和十六年四月ヨリ開校ノ件昭和十六年三月十四日認可セリ」と、函館市立工業学校の設置認可を告示していた。位置は函館市川原町、学科は機械製図科、工作機械科、建築科、電気科、修業年限は2年、入学資格は高等小学校卒業程度とされている。ここで、同校の設置の背景および経緯を、申請書添付の関係書類によってみていきたい(国立公文書館所蔵、文部省文書課関係文書「自昭十六年三月至昭二十二年十月工業学校設置廃止認可」第2冊)。昭和15年3月11日、函館市会において、全員賛成のもと、市長に対し、市工業発展のため速やかに市立工業学校を建設するよう建議が行われてたが、その背景には、「開港以来北方文化発祥ノ都市トシテ重キヲナシ今日ニ於テハ人口二十三萬ヲ擁シ東北・北海道第一ノ大都会トナリ」、最近「特ニ鉄工、造機、造船、水産加工、鑵詰、建築、家具、造作、電気、機械製作及是等修理取扱ニ関スル諸工業極メテ活発ニ勃興シ会社工場殷賑ヲ極メコノ方面ニ工人技術家ヲ要求スルコト頗ル大ナルモノアリ」。他方既設教育機関は他都市に比較して少なく、中等学校への進学を希望しながら志望を叶えられない者が多数おり、さらに「北海道庁立函館工業学校ハ所謂甲種程度ニシテ卒業生ハ他地方ニ進出就職スル者多ク本市ニ残留スルハ極メテ尠ク僅カニ両三名ニ過ギズ市内工業当局者ハ有能技術者ノ不足ニ悩ミ其ノ進展ヲ阻害セラルゝコト甚大ナリ」という状況があった。 このような事情のもとで、「市立工業学校ヲ設置シ乙種程度ノ夜間授業二ヵ年トナシ」、「時局下資材ノ乏シキ折柄独立校舎ハ他日ヲ期シ当分北海道庁立函館工業学校ノ諸設備ヲ共用スル」方途が求められ、「数多キ将来工業ニ従事セントスル高等小学校卒業者ヲ入学セシムルト共ニ昼間実務ニ従事セル工人徒弟ヲ通学セシメ益々優秀技術者タラシムルノ策」が講じられるのである。市産業振興の基調を整え、市民の要望に応えるための施策であったといえる。 なお、庁立函館工業学校々舎の使用に関しては、「北海道庁立函館工業学校々舎ヲ函館市立工業学校ニ於テ夜間借用使用中萬一当方ノ過失ニ依リ失火及諸設備ヲ毀損シタル場合ハ其ノ損失ヲ函館市ニ於テ負担致ス可ク後日ノ為念書一札相入レ申候」という函館市長の念書が入れられている。 「調書」によれば、学級および生徒定員は8学級240名、経費および維持の方法は授業料などの収入以外は函館市費をもって維持するとされている。 |
「函館市史」トップ(総目次) | 通説編第3巻第5編目次 | 前へ | 次へ |