通説編第3巻 第5編 「大函館」その光と影 |
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第3章 戦時体制下の函館 函館高等計理学校の設立 |
函館高等計理学校の設立 P1199−P1200
申請書は、函館市の歴史的発展の跡を述べ、実業の実況に触れて当該学校の必要を説いている。すなわち、「設置区域函館市は我国五港の一として開港され運輸交通の設備及産業の発展は最近著しきものあり」「本年四月一日湯の川村を合併し人口は二十三万余、全国第十二位に位し、貿易高内外合わせて昭和十三年度貨物集散高十億七千万円、最近は外国貿易躍進し六千万円台を突破し、北洋漁業も暫定協約の結果漸く安定し、本市は挙げて熱意を以て漁業権の確保に努力して居る」。さらに「本市は観光地として湯の川市営温泉を有し通過客二百八十万を超する有様である」と産業各分野の盛況に触れ、商業計理に関する教育需要に説き及んでいる。「市は商業股盛にして計理方面に従事する者夥しく本市実業界の大部分は商業並に計理を主とする業務である。されば高等小学校卒業者にして斯種教育を受けんと欲する者実に二千名の多きに達す。尚函館市外郡部を算すれば五千名の多きに達す」としている。 他方で、市内の中等学校数の不足、特に男子私立学校なかでも計理方面の職業学校が絶無であることを強調している。そのために、この種の学校への志願者が多く、入学試験の競争が激甚を極めていることを指摘している。具体的には、この年開校した函館計理学校への志願者の殺到ぶりを紹介している。「函館計理学校開校するや志願者殺到し募集人員五十名に対し三百名の入学志願者を算する有様なり」というのである。そこから「依之観此商業計理方面の学問を修めんとする者本市には正に多きを知るに足る」とされる。さらに具体的に「当市実業界教育界の意見を徴するに等しく二ヶ年制の乙種実業学校の設置を希望し居る次第」とし、「本校の設置は充分意義ありと信ず」と、計理学校の昇格による高等計理学校の設置に言及するのである(国立公文書館所蔵、文部省文書課関係文書「函館高等計理学校設置」)。 |
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