「函館市史」トップ(総目次)
第3章 戦時体制下の函館
第1節 戦時体制下の行政
1 戦争協力体制
国民精神総動員運動
函館市防護団
「家庭防火群」の創設
国家総動員法
函館市の町会設置
常会の開設
町内会部落会に法的根拠
戦時体制下の市役所組織
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函館市防護団 P1113−P1115
この国民精神総動員運動は国民に銃後後援の万全を求めるものであったが、とくに戦争が総力戦ということもあって防空態勢の強化が求められた。このため12年4月に都市の防空計画・活動の法制化を目指して公布された防空法は、予定を繰り上げて10月に施行されている。全国的には以前からそれぞれ防護団も結成され、灯火管制などを主な内容とする防空演習は既に実施されていたが、法の施行により全国的な取り組みとなった。函館市でも前年6月に、消防組の指導で第1回函館市防空演習が実施されている(函館市消防本部『沿革史』)。
11月、北海道庁警察部に防空法を所管する防空課が置かれ、市町村に防空計画の策定が指示された。
函館市も市長を会長とする防空委員会を設置し、函館市区域を防護する防護団および函館港水域を担当する水上防護団を結成した。ここでいう防護とは「戦時、事変ノ際主要施設物件ヲ警護シ或ハ敵航空機ノ来襲ニ際シテ行フ必要ナル警報伝達灯火管制実施ノ補助、防火交通整理防毒避難救護配給等ノ諸業務(団則第3条)」の総称で、結成式は12月3日3000余人が参加して函館公園で挙行された。防護団(28分団)および水上防護団(4分団)とも団長は市長坂本森一で、副団長は防護団が3人(助役弥吉茂樹、在郷軍人会函館市連合会分会長桜井利吉、衛生組合火災予防組合連合会長井上金之助)、水上防護団が2人(助役弥吉茂樹、船主同盟会長小川弥四郎)、事務所は市役所内に置かれた。団員は、古年次在郷軍人、軍友会、火災予防連合会、衛生組合連合会、学校教職員生徒、青年団、少年団、連合婦人会、愛国婦人会、国防婦人会、医師会、歯科医師会、薬剤師会、産婆会、看護婦会、工場協会、自動車協会、軍用犬協会、はとの会等の団体員で構成された。水上防護団には船主同盟会、海運業組合、運送艀業組合、通船業組合、倉庫業組合、沖商組合、船舶信号所等が加わっている。函館市の防護という目的の下に市内の関係諸団体が網羅されたわけである。
結成式終了後、警察署所管の消防組と共同で3日間にわたって上磯町、湯の川町、亀田村と合同の防空訓練(灯火管制、防火及防毒、非常警報対処)が実施されている。函館市防空本部が編集配布した「防護団員必携」に則った訓練であった。必携には「防空委員会規約」「防護団団則」「水上防護団団則」「両防護団各部の業務細則」「灯火管制規則」が収められ、中でも工作部業務細則中には「偽装遮蔽迷彩」の実例図解まで載せられているという詳細なものであった。以後、防空委員会は毎年当該年度の防空計画(15年からは永年計画も)を審議決定するものとなり、防空訓練も年3〜4回実施された。これらの事務を担当する係として、市役所では教育課に防空係が置かれたが、防空に関する思想の普及徹底を意識したものと思われる。この防空係の新設は市役所の分課における戦時対応の第1号であった。
その後、この組織は全国規模での整備が進められ、14年1月警防団令が公布され、防護団と消防組を合わせて「防空、水火消防其ノ他ノ警防」(第1条)を担当する警防団とすることとなり、「団長及ビ副団長ハ地方長官其ノ他ノ団員ハ警察署長」が任免する組織となった。函館でも4月1日に函館市警防団に改組され、団長に市助役阿部平三郎、副団長に小川弥四郎、勝田弥吉、西出孫左衛門がなり、市役所にも警防課(警備係[総動員警備、港湾警備協議会、防諜事務、水火消防其他警防、警防団、家庭防火群其他警防団体連絡、消防義会などに関する事項]と防空係[防空計画、防空委員会、防空の実施に必要なる設備又は資材の整備、防空の実施及訓練、防空教育及防空思想の普及及宣伝、其他防空事務に関する事務])が置かれたが、翌15年3月にはさらに防衛課と改められた。防衛課は警防課と衛生課を合わせて1課としたものである。なお、消防組は函館市警防団消防部となった。
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