通説編第3巻 第5編 「大函館」その光と影


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第1章 露両漁業基地の幕開け
第2節 商工業の進展と海運・漁業の展開
2 函館工業の近代化への途
1 工業化への道程

工業とは−製造場と職工と−

営業者種類別にみる工業の比重

営業税納付額などにみる工業の地位

家内工業の動力化

驚く工業生産額の伸び

驚く工業生産額の伸び   P99−P103

図1−1 大正元年〜11年函館物価ならびに賃金対照表
 表1−30で、明治44年から大正8、9年までの工産、水産、畜産、農産、林産をあわせた総生産額の状況を示すが、各年とも工産は合計の90%弱、水産が10%強で、この2者で毎年95%を上回っている。
 工産の金額は明治末期の100万円台が大正初期には200万円台となり、大正7年には、明治44年の約10倍となる。この後は1000万円台に定着する。この間には物価の上昇もあって、図1−1でみるとおり、大正5〜8年の騰貴は特に激しく、8年には元年の2.5倍をこえている。こうした価格の上昇を差引いても、工産品の量的拡大はきわめて大きい。
表1−30 総生産額の推移
                               (単位:円)
年次
工産
水産
畜産
農産
林産
合計
明治44
大正1
2
3
4
5
6
7
8
9
1,608,325
1,984,172
2,599,003
2,120,445
2,563,863
3,850,645
7,951,637
16,085,363
13,720,089
15,079,852
189,536
595,811
485,554
534,379
268,678
561,506
655,772
116,838
620,251
1,045,310
110,508
105,214
111,544
110,919
135,218
194,410
211,983
311,911
325,090
301,701
68,413
83,419
94,693
105,485
72,523
72,204
94,772
109,082
235,383
160,466




6,018
24,300
24,025
24,840
300
1,976,782
2,768,616
3,290,794
2,871,228
3,046,300
4,703,065
8,938,189
16,648,034
14,901,113
16,587,329
各年『函館区統計書』による。ただし、大正5年は『北海道庁統計書』による。
 ここで、表1−31により主要工産品の生産額をみると、造船、鉄工、製材業の生産財の伸びが目立って高く、100万円台をこえるが、このほか100万円をこえるものはに、肥料、漁網、酒、菓子がある。100万円以下では、製綿と清涼飲料が伸びている。
 次に、表1−32で業種別に工場数、職工徒弟数、動力(馬力数)をみると、やはり造船、鉄工、製材、木工所部門では、工場の新設と労働力およびエネルギー(電力)の投入増加が生産額の上昇をもたらしたことがわかる。
 造船、鉄工では従業員が1000名をこえ 製材・木工では動力の増強があった。
 各種の食料品工業や製綿業では、0.5から1馬力をそなえた家内小工場が新設されたのである。
 会議所の工場表により、大正9年現在の388工場の開設年次をみると、その60%が明治43年以降、大正9年までに創業されている。そしてこの期間に創業された工場は、昭和5年現在の261工場のうち、38%を占めている。ともあれ、工業化を区統計でみると、

…前年ニ比シ工場数ハ二三、生産価額八六万円ヲ増加セシハ新ニ漆器、搗砂、精麦、清涼飲料ノ各工場設立セラレタルト、製綿、造船、製粉、木工、製材、豆腐等ノ各工場増設セラレタルガ為ナリ(大正四年)
…前年ニ比シ工場数三七、職工数一、二二八人、生産額三九九万円ヲ増加セシハ各種工場ノ発展ニ由ル(大正五年)とあって、工業発展の勢いは大正八年に少しおちるが、九年も続くのである。

表1−31 主要工産品の生産額
                                                  (単位:千円)
業種
品目
明治44
大正1
大正2
大正3
大正4
大正5
大正6
大正7
大正8
大正9
造船業 造船
(指数)
66
100
87
131
139
211
94
142
193
292
533
808
924
1,401
5,444
8,247
1,094
1,657
1,398
2,118
鉄工業 機械
(指数)
121
100
186
153
384
316
96
80
164
135
398
328
2,873
2,368
2,107
1,737
1,493
1,231
3,233
2,665
製材・木製品工業 製材・木製品
(指数)
39
100
70
181
292
754
280
723
334
863
647
1,673
832
2,150
944
2,440
1,070
2,766
1,111
2,873
食料品工業
(指数)
300
100
417
139
406
135
357
119
351
117
378
126
491
163
557
185
1,217
405
521
173
醤油
(指数)
109
100
171
157
141
130
106
98
129
118
166
153
207
191
236
217
516
475
284
261
味噌
(指数)
74
100
88
119
99
134
106
144
87
118
91
123
107
144
132
179
336
454
241
326
清涼飲料
(指数)
3
100
3
82
 
 
31
912
36
1,046
42
1,222
48
1,411
244
7,161
74
2,183
菓子
(指数)
 
 
 
 
 
71
100
9
12
162
227
166
233
2,500
3,510
刻昆布
(指数)
60
100
40
68
89
149
92
154
37
61
15
25
68
115
99
167
 
 
肥料 肥料
(指数)
204
100
263
129
576
283
475
233
517
254
751
369
1,305
640
1,852
909
1,842
904
1,202
590
製紙印刷 製紙印刷
(指数)
92
100
129
141
76
83
136
149
172
188
175
191
164
179
 
 
 
糸縷布帛工業 漁網
(指数)
583
100
591
101
664
114
615
106
613
105
761
131
958
165
1,357
233
1,815
312
653
112
製綿
(指数)
12
100
47
386
50
415
37
302
71
587
88
726
93
770
173
1,428
342
2,824
166
1,369
その他の工業 毛皮
(指数)
111
100
222
201
176
159
226
204
205
186
272
246
477
431
473
428
35
32
17
16
皮革製品
(指数)
 
 
 
 
100
100
51
51
55
55
79
79
331
332
325
326
ガス・電気工業 ガス
(指数)
 
 
76
100
105
138
112
148
125
164
132
174
224
296
 
179
237
電気
(指数)
303
100
415
137
324
107
401
133
432
143
495
164
638
211
68
2279
 
 
各年『北海道庁統計書』および『函館区統計』による。
この表の合計額は表1−30の工産額とは一致しない。
表1−32 工場表
 
明治43
明治44
大正1
大正2
大正4
大正5
大正6
大正7
大正8
大正9
造船業 工場数
3
5
5
5
11
16
7
5
5
9
職工徒弟数
397
437
380
709
549
1,024
1,404
1,434
1,007
1,038
動力 電気
蒸気
270
150
270
150
270
150
105
100
192.5
0
207.5
150
222.5
0
225.5
300
227.5
780
221
300
鉄工業 工場数
13
18
18
18
36
43
36
42
38
73
職工徒弟数
100
227
259
278
450
597
713
1,024
875
949
動力 電気
蒸気
12
33
12
44
25
39
63
0
82
0
200.5
0
228
0
353
0
294
0
335.5
120
製材業 工場数
6
12
21
23
30
27
17
22
19
31
職工徒弟数
61
81
95
133
193
163
110
84
120
148
動力 電気
蒸気
8
120.5
32
101.5
158
267
404.5
0
312
0
368.5
0
391.5
0
406.5
0
494.5
0
537.7
0
木工業 工場数
 
3
10
25
15
21
26
24
22
23
職工徒弟数
 
7
23
90
81
86
155
122
122
173
動力 電気
蒸気
 
3
6
19.5
6
82.25
0
47
0
103.5
0
223
0
99.5
0
108
0
116
0
食料品工業 工場数
44
55
67
90
116
136
128
148
137
167
職工徒弟数
209
256
293
381
501
636
596
690
650
1,025
動力 電気
蒸気
175
12
178
4
88
1
159.5
2
199
0
239
0
259.5
0
350.51
0
317.51
0
356
20
肥料 工場数
1
2
3
3
6
6
5
6
6
7
職工徒弟数
100
105
84
81
86
89
88
93
94
99
動力 電気
蒸気
0
125
0
125
19
125
29
0
15
0
44
125
47
0
49
125
49
280
54
280
製紙・印刷 工場数
8
10
13
14
16
19
17
19
19
20
職工徒弟数
156
168
184
207
225
216
229
233
227
235
動力 電気
蒸気
10.5
16
21.5
21
19.5
17
39.5
0
25.5
0
38
0
44.5
0
43.5
0
43.5
0
44.5
0
糸縷布帛工業 工場数
3
4
17
19
29
31
34
34
31
32
職工徒弟数
225
230
972
867
890
1,105
974
1,023
363
368
動力 電気
蒸気
5
3
5
4
13
5
53
0
53
0
82.5
0
87.5
0
88.5
0
103
0
105.5
0
その他の工業 工場数
1
2
2
7
16
15
8
18
17
26
職工徒弟数
58
59
63
172
185
178
77
314
232
259
動力 電気
蒸気
0
0
1.5
1.5
0
1
33
0
24.5
0
12
0
7
0
9
0
10
0
39
0
合計 工場数
内5人以下の工場数
79
35
111
46
156
90
204
114
275
134
314
159
278
139
318
165
294
131
388
209
職工徒弟数
1,306
1,570
2,353
2,930
3,160
4,094
4,346
5,017
3,690
4,294
動力 電気
蒸気
480.5
459.5
523
457
612
611
968.75
102
950.5
0
1,295.5
275
1,510.5
0
1,625.01
425
1,647.01
1,060
1,809.2
720
各年『商業会議所年報』より作成。動力は馬力数である。
注)上記の業種分類は昭和2年の年報から採用されている。それまでは工場表の個別工場をこの分類で整理した。
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