通説編第4巻 第6編 戦後の函館の歩み |
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第2章 高度経済成長期の函館 持続的成長の課題 |
持続的成長の課題 P421-P422 函館地区の濡れ珍味加工業は昭和50年代から好景気、観光ブーム、グルメブームといった追い風のもとでめざましい成長を遂げてきたが、しかし持続的な成長を果たしていくうえでいくつかの重大な不安材料も抱えている。第一に需要基盤である生鮮市場に内在する不安定性や不確実性の問題があげられる。それは具体的に次のような理由による。(1)物産展・催事需要が販売体制の固定性あるいは定期性の面において安定性に欠けるものであり、また浮動的な消費性向に支えられているという面において確実性に欠けるものであるからである。とくに小規模・零細層などで依存の大きい催事屋向けの需要も隙間市場としての宿命的な不安定さをはらんでいるためである。(2)観光みやげ需要も近年の道内および函館の観光ブームに多分に便乗したものであり、持続的な需要形成といった面で依然不安を残しているためである。(3)通販需要もそれがカタログなどの媒体による組織化・システム化されたものでないこと、また電話などによるリピート注文も持続性や定着性といった側面で不確実性が高いためである。(4)高級珍味市場の需要はもともとその市場が狭小であり、加えてその需要も折からのグルメブームといった好況に支えられたものでもあったためである。第二に惣菜加工品市場に対する販売対応の脆弱性の問題である。それは、とくにイカ塩辛製品に関わる卸売段階の販路形成の問題として指摘され、それが当該製品の流通促進を図るうえで重大なネックとなっているためである。そうした流通面の制約が当該製品において卸売市場の荷受会社を介在させた出荷対応を取らせている理由でもある。しかしながら、荷受会社を介在させた出荷対応は荷捌きや代金回収の面での確実性はあるものの販売促進や量販店への対応力などの面で必ずしも満足させるものとなっていない。そのことが逆に函館において惣菜加工品市場への対応を消極化あるいは回避させる方向で生鮮珍味市場への対応を選択させてきた理由でもあったと評することができる。 加えて第三にイカ塩辛市場の成熟化と量販店における取扱の集約化・選別化の問題である。当該市場は全国市場化のもとで波及的な拡大・成長を達成してきたが、形勢として成長性を鈍化させながら成熟市場化の様相を強めさせているためである。さらにそれと相応しながら量販店における取扱ブランドの集約化や問屋・メーカーの選別・絞り込みも進んでいるためである。 第四に産地・加工業者の簇生に伴う産地間・企業間競争の激化の問題である。近年、イカ塩辛市場の拡大・成長を背景に当該製品分野への産地・加工業者からの新規参入が増加しており、それに伴って産地間および企業間の競争が熾烈化する傾向にあるためである。とくに惣菜加工品市場対応型のメーカーでは厳しい競争と対応に迫られているためである。 これらの課題は当該加工業の成長における制約要因となっていくことも懸念され、その意味においてイカ塩辛を中心に成長を果たしてきた函館の濡れ珍味加工業はひとつの転換点に立たされていると評することができる。それはまさにバブル経済の崩壊と長期不況のなかで次第に顕在化していくのである。 |
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