通説編第4巻 第6編 戦後の函館の歩み |
|
第2章 高度経済成長期の函館 労働力条件の変質と労働集約型産業の限界 |
労働力条件の変質と労働集約型産業の限界 P412−P413 イカ乾燥珍味製造業が最大の地場産業として成立することにおいて重要な要素となってきたのが労働力調達の条件であった。それはこの製造業が典型的労働集約型産業として、そのための潤沢で低廉な労働力の給源が地域内に広く存在してきたからにほかならない。その根拠となってきたのが、第一に主婦を主体とした女性労働力であり、それは昭和60年に実施したアンケート調査において回答企業22社の総従業員のうち実に88パーセントが女性で占められていたことでも明らかである。しかも第二に雇用における臨時・パートへの依存であり、それは同様の調査において従業員全体の約40パーセントとかなり高い比率であったことで明らかである。同様に第三に年齢構成における中高年層への依存であり、それは同様の調査で女性従業員(製造部門)の4分の3が40歳代と50歳代で占められていることで明らかである。しかし、こうした労働力調達の条件は近年急速に崩れつつあり、当地加工業の存立基盤を大きく動揺させている。その背景にあるものを列挙してみる。(1)典型的な3K職域である水産加工業に対する就労の敬遠性。とくに水・汚れ仕事となる前処理加工を担うところほど顕著である。(2)函館地域における婦人パート労働市場の拡大とパート賃金の総体的上昇による労働力吸引。とくに最近は観光・温泉、量販店、外食店などの第3次・サービス部門での女性パート需要が増大する傾向にあり、(1)とあいまって当該産業における求人難の大きな要因となっている。(3)消費地問屋による産地工場進出に伴う労働力吸引。最近では最大手問屋による大型工場の開設に伴って若年層を中心とした大量雇用がおこなわれているからである。(4)函館地域における主婦労働力給源の縮減。つまり、当地加工業において就労する女性労働者はおもに家計補充を目的として就業している主婦層であるが、その重要な給源となってきたのが函館地域の主要産業であった造船、国鉄、漁業関係の就労者世帯の主婦であったからであり、そうした地域産業の崩壊とその就労者世帯の地域外拡散は当該加工業の労働力給源の縮減を大きく招いているからである。(5)人手不足に対する対応の遅れ。それは 第一に地域労働力の逼迫に対応した新たな労働力給源の確保(周辺地域への工場分散や外国人研修生の受け入れなど)や海外合弁進出・国際分業の推進などの立ち遅れとして、また第二に加工の省力化・機械化の立ち遅れとして示される。 |
「函館市史」トップ(総目次) | 通説編第4巻第6編目次 | 前へ | 次へ |