通説編第4巻 第6編 戦後の函館の歩み


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第2章 高度経済成長期の函館
第3節 函館の産業経済の変貌
3 イカ珍味の加工産地への転換とその特産地形成

スルメから珍味の時代へ

イカ乾燥珍味加工業の沿革

産地間競争と特産地の確立

加工業者の二極化と再編成

市場・流通の変化と販売対応

労働力条件の変質と労働集約型産業の限界

今後の方向性−経営の二極化と地場勢力の後退−

濡れ珍味加工業の沿革

加工業者の多様さと指導的企業

加工の技術革新と新製品開発

需要と市場対応

持続的成長の課題

加工業者の多様さと指導的企業   P415−P417

 函館地区における濡れ珍味加工業者は3つの勢力から大きく構成されている。第一は、旧来からのイカ塩辛を主体とした濡れ珍味産地としての伝統を保守してきた既存の専業勢力である。それには塩辛関係で大手2社と中堅4社があげられる。後者では伝統的製法による塩辛加工がおこなわれており、促成製法主流のなかで産地差別化の面から重要な役割を担っている。第二は、近年、起業化してきた新興の専業勢力であり、それらの企業には塩辛を中心とした生鮮珍味系統と松前漬主体の系統とがある。業態としてはトップの大手1社を除けば中小主体の経営となっているが、それらには発展途上特有の活力感に溢れた企業も多く、当該業種の成長の原動力となっているものである。第三は、乾燥珍味加工業などからの新規参入の兼業的勢力であり、軒数的にもっとも多くなっている。このように函館地区の加工業者は既存と新興、大手と中小、専業と兼業といった多様な構成を有し、そのことが当該業種の成長の重要な背景ともなっている。
 さらにそうした加工主体の形成と関わって注目しなければならないのはそこでの指導的企業の存在である。その役割を担ってきたのが角萬長浜谷商店、布目、竹田食品の大手3社であり、つまりそれらの企業が成長を遂げることで函館地区の濡れ珍味加工業の発展における牽引車的役割を果たしてきたからである。とくに布目と竹田食品における企業間競争が当該加工業の成長をリードしてきたと評することもできる。さらに松前漬の分野において指導的企業の役割を果たしてきたのが丸大みなみ食品であり、同社はダイヤ漬などのヒット商品に代表される商品開発力と販売力によって近年成長を遂げている中堅メーカーである。
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