通説編第4巻 第6編 戦後の函館の歩み


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第1章 敗戦・占領、そして復興へ
第1節 連合国軍の函館進駐
3 外国人労働者の動向

戦時期の朝鮮人労働者

朝鮮人と中国人の強制連行

函館俘虜収容所

敗戦時の外国人労働者

敗戦と朝鮮人連盟函館支部の結成

朝鮮民族統一同盟と朝鮮人連盟中央総本部

統一同盟全道大会と朝鮮人連盟小樽支部

北海道朝鮮人援護局

函館地方朝鮮人連盟の結成と活動

朝鮮人の帰国問題と朝鮮人連盟の推移

食糧危機と配給事情

函館の闇市とその取締り

朝鮮人団体の抗議

函館地方朝鮮人連盟の結成と活動   P81−P83

 さて、同年10月25日付けの「北海道新聞」に次のような記事がある。それは、日時を報道していないが「朝鮮人函館地方連盟」が結成されたという内容である。

    朝鮮人函館地方連盟を結成
 函館市及び渡島、檜山両支庁在住の朝鮮人は函館地方連盟会を結成、秩序ある独立国民として帰国者の指導、求職斡旋、永住者の保護救済及び治安維持の徹底を期することとなつたが、現在函館地方には七千人以上が在住し、この中八割は帰国希望者で、冬を控へ衣食生活問題が緊迫してゐるので、連盟では進駐軍当局か警察の斡旋を求め、遅くも十一月中に第一回一千人を帰国せしめようと諸準備を進めてゐる
 連盟事務所 鶴岡町三五番地
 連絡事務所 東雲町沼田方(電五三六六番)
 会長 魏春源
 副会長 申弼龍、田春道、洪淳範
 総代 朴判用、趙允支、金義用、朴又八、陳永道、李鳳朱、柳秀作、柳宥馨、鄭基奉、全徳丸、金容励、全聖浩、金永三、曹末守、鄭龍守
 幹事 全美用、柳秀信、李鳳朱、曹末守、鄭基奉、梁川、趙火先、限永道、朴又八、朴判用

 この記事から判断する限り、朝鮮人函館地方連盟(もしくは朝鮮人函館地方連盟会)が、札幌の朝鮮民族統一同盟系の組織なのか、あるいは東京に拠点を置く朝鮮人連盟の系統に属するものなのか明らかではない。組織の名称からみれば、朝鮮人連盟の支部的な色彩が強いといえよう。しかし、朝鮮人連盟の北海道の支部は、20年12月20日段階では小樽市に存在するだけであるから(前掲「戦後の在日朝鮮人コミュニティにおける民族主義運動研究」)、この函館地方連盟は朝鮮人連盟の正式の支部とはいえない。また、この記事で注意すべきは、会長に魏春源、すなわち田村春源が選ばれていることである。彼は、戦前の協和会組織にも関わっており、本来ならば親日派として排斥される可能性を持った人物である。東京の在日本朝鮮人連盟中央総本部の結成過程では実際に親日派の排除がおこなわれており、そうしたことを考えれば、函館地方連盟はやや古い体質を残した組織であるといえよう。
 この函館地方連盟のおこなった事業には、函館市内の秩序の維持と共に、本国への帰還運動の推進があった。前者に関しては、昭和20年11月6日付けの「北海道新聞」に「治安隊を結成 朝鮮人連盟」、と報道された次のような記事がある。

 函館地方朝鮮人連盟会では今回進駐軍憲兵隊の指令によつて治安隊を結成し問題の万歳館通りなどにも二、三日前からこの治安隊が三班に分れて交互に出動し″コーリアン・ポリス″の腕章に物を言はせて闇業者の説得に当たつてゐるが日本警察署とも連絡協力治安公務を執行しようとするもので隊員は田春道氏を隊長に、班長三名と隊員十五名からなつてゐる、なほ右連盟会治安隊はこの他に所謂先住朝鮮人の帰国相談にも一役買つてゐる

 この記事にもみえるように、「コーリアン・ポリス」結成のきっかけはアメリカ軍憲兵隊の指令によるものであり、当時問題となっていた「闇業者」の取締に当たっていたのである。一方、後者に関しては、同じ11月6日・7日付けの「北海道新聞」に次のような広告が掲載されている。

急告! 函館地方在住 朝鮮人帰国斡旋
 一、手続方法(イ)家族持は家族全部、同居人も含む・現住所・氏名数へ年を記入する事 
         (ロ)独身者は独身者と記入の事
 二、申込場所 同会又は地方にありては最寄りの警察駐在所に至急申込まれたし
             函館市東雲町一五番地(連絡事務所)
                       函館地方朝鮮人連盟会
   ★締切十一月九日              電話五三六六番

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