通説編第4巻 第6編 戦後の函館の歩み |
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第1章 敗戦・占領、そして復興へ アメリカ軍による軍政開始 |
アメリカ軍による軍政開始 P64−P66 このように開始されたアメリカ軍による日本占領の期間は、一般的には、昭和20年8月15日の敗戦後、日本が降伏文書に調印した9月2日を起点とし、昭和26年9月8日のサンフランシスコにおける対日講和条約の調印を経て、翌27年4月28日の同条約発効をもって終了すると理解されている。もっとも、これはあくまでも「日本本土」に限ってのことである。日本占領史研究の研究者の1人は、日本占領をトータルに考えた場合、その起点は、沖縄全島に軍政が敷かれた昭和20年6月であり、サンフランシスコ講和条約によって北海道・本州・九州・四国の占領が解かれ、昭和28年の奄美群島、同43年の小笠原諸島、同47年の沖縄の返還という諸段階を経て現在に至っているが、今日なお「北方領土」の返還問題が実現していない以上、その終期は「未確定」であるという見解を打ち出している(竹前栄治『占領戦後史』)。主張の是非はともかく、この7年間に及ぶ日本占領期は、基本的にアメリカ軍による軍政がおこなわれた時期である。ただし、日本本土の占領を開始するに当たって、最初マッカーサーは、沖縄のような直接占領方式を意図し、太平洋陸軍総司令部のなかに民政業務を担当する軍政局(MGS)を設置した。しかし、途中で間接占領の方式に転換し、10月2日にMGSを解消して連合国軍最高司令官総司令部(GHQ・SCAP)を設置し、その下に民政局(GS)・法務局(LS)・経済科学局(ESS)・民間通信局(CCS)・天然資源局(NRS)・統計資料局(SRS)・民間諜報局(CIS)・民間情報教育局(CIE)・公衆衛生福祉局(PHW)の9局を配置し、日本の民主化と非軍事化を基本とする占領政策が開始されるのである。間接統治であるから、占領軍が直接日本国民に命令や指示を出すのではなく、これらの命令は一括して連合国軍最高司令官が日本政府に出し、日本政府は責任を持ってその命令を施行するという方式であった。そのことをチェツクするために、占領軍は各種の軍政本部と都道府県毎の軍政部を置いた(竹前栄治 『GHQ』)。 日本を占領したアメリカ軍は第八軍と第六軍であるが、第八軍(横浜)の下に第九軍団(札幌)・第一四軍団(仙台)・第一一軍団(横浜市日吉)が配置され、東日本地区の占領を担当した。第六軍(京都)の下には、第一軍団(大阪)・第一〇軍団(呉)・第五海兵軍団(佐世保)が配置され、西日本地区の占領をおこなった。20年12月31日、第六軍団は帰国のため編成を解除され、その所属部隊と占領事務は21年1月1日から第八軍に引き継がれた。このため、第八軍が日本全体の占領を担当することとなった(荒敬『日本占領史研究序説』)。 地方軍政の具体的な進め方は、日本全土に展開した占領軍のなかから民事行政に適格性のあるスタッフを選んで軍政部を組織し、それを通じてなされた。昭和21年1月から6月にかけて、札幌(第一〇五軍政グループ)・川崎(第一〇六軍政グループ)・大阪(第一〇七軍政グループ)・呉(第九四軍政グループ)・久留米(第九五軍政グループ)に各軍政グループが設置され、その下に軍政中隊が設けられて1県から3県を管轄したが、その後組織改正がおこなわれ、同年7月1日、第八軍の下に北海道・東北・関東・東海北陸・近畿・中国・四国・九州という8地方軍政部が設置され(北海道のみ地区軍政部)、その下に府県軍政チームを置くという機構が成立した(前掲 『GHQ』)。その後昭和24年6月になり、第八軍の軍政機構である軍政局(M.G.Section)と地方軍政部(M.G.Team)をそれぞれ民事局(Civil Affairs Section)と地方民事部(Civil Affairs Team)に改称し、7月1日から実施された。その理由について鹿島平和研究所編『日本外交史』26は、「軍政という語は、日本においても他の占領諸地域におけると同様な直接軍政が施かれていることを意味するというような誤解を常に与えていた。占領の最初から、日本政府は、占領軍指令を実行する責を負い、正当な意味における軍政は、日本においてかつて一度も行なわれなかった。いわゆる軍政局及び軍政部の任務は、単に監視及び実情報告にとどまっていた。占領の様相も変化してきたので、これと歩調を合わせて、占領軍機関の真の機能をより適切に表現するよう、民事という語が採用されたのである」と記している。このような「軍政」名の改称を積極的におこなったのは、もちろんGHQの側である。 同年11月末までに、各都道府県民事部の業務は縮小されて7地方民事部と北海道地区民事部に統合され、第八軍民事局も12月末で廃止された。昭和25年1月以降は、連合国軍総司令部に各地方民事部の指揮権が引き継がれた(前掲『日本外交史』)。 |
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