通説編第3巻 第5編 「大函館」その光と影


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第2章 20万都市への飛躍とその現実

第4節 戦間期の諸産業
3 工業化の進展

1 工業界の概況

工場数、工業会社数

職工数

電力の需要・供給状況

生産額(品目別、業種別)

物価の動向

市民所得に占める工業の地位

市民所得に占める工業の地位   P441−P442

表2−59 市民所得(大正14年)
1個人業主所得
構成比
商業
牧養及採取業
工業
田自作
畑自作
原野
山林
3,483,056円
443,501
352,444
2,005
7,549
9,452
2,700
4,300,707
(81.0)18.8%
(10.3)2.4
(8.2)1.9




(100.0)23.2
2財産所得
構成比
貸宅地及貸家
貸金預金利子
配当
貸田
貸畑
2,486,228
1,138,579
821,422
180,484
91,621
4,718,334





25.4
3勤労所得
構成比
俸給給料
賞与
庶業
其他所得
諸給与
労力
2,266,688
606,133
546,224
480,688
407,133
38,445
4,345,311






23.4
4法人所得
構成比
法人所得
5,200,000
28.0
合計
18,564,352
100.0
大正14年10月9日付「函新」より作成。
 前述した需要増加の源泉である市民所得(分配面)の構成を、大正14年10月9日付の「函館新聞」に掲載された「職業別に見た函館市民の所得」によってとりまとめたのが表2−59である。法人所得が概算ではあるが、個人業主所得、財産所得、勤労所得の4者ともに、それぞれ2割強の構成となっている。これは所得税に関する税務資料を利用したもので、現在の市民所得計算の精度とは比較のできるものではないにしても、個人所得を把握する史料としては有用である。
 また第1種法人所得のうちには工業会社も含まれるが、その内容は不明であるので、とりあえず個人業主所得に占める工業の地位をみると、8.2%であって、商業の81%と牧養及採取業(漁業であるが、露領漁業を含まない)の10%に続いている。前章の大正6年の個人所得額では、工業は8万円であったのが、大正14年には35万円と4倍強の大きさとなったのである。
 そしてこの頃の個人所得税法では、年所得額400円以下は免税者とされるから、多数存在する零細な工業はこの所得額には算入されていないし、また後述する主要工業会社の従業者の俸給・給料などで、勤労所得に算入されているものもあると思われる。そして法人工業企業の所得も合計した全市内工業生産所得額はもちろん高くなると推論されるが、表2−59の工業個人業所得でみる限りは、商業の1割強にすぎぬのである。
 また、しばしば函館の特徴とされる貸地・貸家・貸金・貸田畑・配当などによる財産所得の高さは表2−59によって明らかであるし、俸給生活者の増加は勤労所得の大きさが示している。なお、露領漁業の資本と労働力が生み出した所得の大部分はここには含まれていない。
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