通説編第3巻 第5編 「大函館」その光と影


「函館市史」トップ(総目次)

第2章 20万都市への飛躍とその現実

第4節 戦間期の諸産業
3 工業化の進展

1 工業界の概況

工場数、工業会社数

職工数

電力の需要・供給状況

生産額(品目別、業種別)

物価の動向

市民所得に占める工業の地位

電力の需要・供給状況   P432−P435

 函館水電(株)の資料を表2−54にまとめた。前章の表1−29(→家内工業の動力化)で大正2年5月末までの需給状況を示したから、それから昭和2年までの14か年間に、工業化の道程を足早に進みだしたことを知ることができる。生産財産業では、鉄工業のほかに新たに製缶業が加わり、製材業や建築用の需要拡大、さらに糸縷製網の需要増大があった。消費財関連では新たにゴム製造業が174馬力と急速に増加し、製菓業も100馬力をこえ、ほかに医術用、水揚ポンプ用、捲上磯用と需要者の多様化がみられる。小・零細工場の多い食料品工業をみると、豆腐製造、刻鯣・刻昆布用、製麺業、味噌製造用では需要者数も供給馬力数も増加している。精米業の需要者数は大正2年の28が大正12年には83と増大し、ここを境に減少に転じている。蒲鉾製造、製粉業は横ばいである。ラムネ製造、製餡業、製飴業、製麩業も業種としての基礎のできたことが明らかである。また食料品工業の関連産業として注目すべきは冷凍・製氷用(小熊水産冷蔵庫)の出現であろう。
 次に糸縷布帛工業では製綿業、洗濯用、裁縫用の需要が伸びており、製畳用、石鹸製造用の需要も生じていることから、衣・食・住生活水準の向上があったことが知られる。大きな減少はセメントの1,200馬力であって、浅野セメントが自家発電の設備を保有するに至ったからである。煉瓦製造業もこの頃には需要がなくなっているが、肥料製造用、硝子用のほかに、セメント練合器用、石材粉砕用にも供給されている。製紙用は北日本製紙に供給され、印刷業も着実に需要が伸びている。
表2−54 電力需要者および供給馬力数明細表
 
鉄工業
鋳鉄業
製缶業
鉱金業
製材業
小割製材
経木製造用
建築用
ラムネ製造
蒲鉾製造
豆腐製造
製餡業
大正12年
11月末
需要者数
馬力数
41
427.5
7
51
2
35.5
3
6
81
1,056
6
8.5
2
7
 
7
10
19
51
65
34.5
4
4
13年
11月末
需要者数
馬力数
44
625.5
6
49
5
30
3
6
93
1,017
6
8.5
2
7
 
8
11
31
80
73
37.5
3
3
14年
11月末
需要者数
馬力数
46
295.5
8
48
5
30.5
4
7
93
1,027.5
6
12.5
4
10.5
5
175
9
15
21
51.5
77
40
3
3.5
昭和1年
11月末
需要者数
馬力数
58
333
7
35.5
4
70.5
5
8
89
989.5
6
12.5
5
11
7
189.5
7
17
24
55.5
91
46.5
3
3.5
2年
5月末
需要者数
馬力数
59
337
7
35.5
4
75
4
7
92
1,116.5
6
12.5
5
11.5
4
97
8
18
15
36.5
98
50
3
3.5

 
製粉業
精米業
刻錫及刻昆布
製飴業
製麺業
味噌製造用
製麹用
製菓用
肥料製造用
印刷業
製紙用
糸繰製網
大正12年
11月末
需要者数
馬力数
20
54.5
83
340.5
9
10.5
3
4
10
13.5
4
4.5
2
2
24
64.5
5
107
28
44
1
28
4
75.5
13年
11月末
需要者数
馬力数
21
60
78
311
10
19.5
4
7
11
18
4
4.5
2
2
28
74.5
4
20
29
43
1
28
3
75.5
14年
11月末
需要者数
馬力数
23
51.5
71
266.5
12
24
3
6
11
20.5
8
9
2
2
38
71
3
20
30
42.5
1
28
3
70.5
昭和1年
11月末
需要者数
馬力数
20
46
63
214
11
24
3
6
11
24.5
7
9
2
2
45
97.5
3
20
31
51
1
28
6
97
2年
5月末
需要者数
馬力数
21
46.5
56
190.5
15
31
3
6
11
21.5
7
9.5
3
3
51
115
4
22
32
54
1
28
8
99

 
製綿業
裁縫用
染網用
洗濯用
煉瓦製造業
セメント製造業
摺硝子用
混凝土練合器
石材粉砕
硝子粉砕
製薬用
ゴム製造用
大正12年
11月末
需要者数
馬力数
42
96.5
3
3
1
1
13
13.5
 
2
1,235
3
2.5
4
43.5
3
12
2
2
2
49.5
3
49
13年
11月末
需要者数
馬力数
50
115
5
4
1
1
19
16.5
 
1
1,200
5
3.5
5
108.5
3
12
2
2
3
52.5
2
119
14年
11月末
需要者数
馬力数
54
115.5
5
4
 
19
15
 
 
8
5
3
9
1
5
2
2
2
47.5
4
110
昭和1年
11月末
需要者数
馬力数
54
128.5
6
4.5
 
26
21.5
 
 
11
6.5
1
4
4
20.5
2
2
2
47.5
3
174
2年
5月末
需要者数
馬力数
52
117
6
4.5
 
31
28
 
 
11
6.5
2
6
4
20.5
2
2
2
52.5
3
174

 
製畳用
石鹸製造用
冷凍用
水揚ポンプ用
捲上機用
医術用
昇降機用
合計
大正12年
11月末
需要者数
馬力数
 
1
1
 
35
100
3
115
16
33
3
28
566
4,224.0
13年
11月末
需要者数
馬力数
3
1.5
3
3.5
 
 
3
115
17
42
2
18
593
4,351.5
14年
11月末
需要者数
馬力数
5
3.5
3
2.5
1
133
52
112.5
3
105
20
54.5
3
21
671
3,043.0
昭和1年
11月末
需要者数
馬力数
5
3.5
4
3
2
138
60
126
3
97.5
30
62.5
4
31
726
3,261.5
2年
5月末
需要者数
馬力数
5
3.5
5
3.5
2
138
66
138
3
97.5
30
60.5
4
40
745
3,318.0
各年『函館水電事業報告書』より作成。
「函館市史」トップ(総目次) | 通説編第3巻第5編目次 | 前へ | 次へ