通説編第4巻 第6編 戦後の函館の歩み


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第2章 高度経済成長期の函館
第8節 宗教と文化の諸相
2 さまざまな文化活動とその担い手

神社と寺院の動向

キリスト教の動向

函館の新宗教の展開

天理教と金光教の動向

函館の教育大学学生にみられる宗教意識

函館の教育大学学生にみられる宗教意識   P577−P578

 前にNHK放送文化研究所によるアンケート、「天皇に対する感情」と「信仰・信心」に関する集計結果を検討したが、ここでは平成11(1999)年に北海道教育大学函館校の学生200人(年齢層は20歳前後)を対象に「宗教意識」にかかわる次のような質問と結果を紹介をしておこう。
 第1問として、「第二次世界大戦中、戦勝祈願などをしていた神社に対してあなたは戦争責任を感じるか」と尋ねたところ、「はい」と答えた人は15人で、わずか7パーセントである。理由としては「天皇崇拝に導いた責任」(6人)、「戦争に加担した」(4人)が上位を占めた。
 「いいえ」と答えた人は72.5パーセントである。理由でもっとも多かったのは「時代背景として仕方がない」(28人)、「神社は国策に利用された」(25人)というところである。しかし、「その実体を知らなかった」(25人)、「戦争を体験していないので責任は感じられない」(22人)、「興味ない」(4人)、「自分がやったわけではない」(4人)というように、よく事実関係を知らないで回答をしている人が、「いいえ」全体の約40パーセントを占めている。
 次に、「第一問の神社に対して、あなたは初詣や現世利益(交通安全・学業成就などの諸祈願)を求めることに違和感を抱いているか」という第2問に対して、「はい」と答えた人は約11パーセント(21人)で、約77パーセント(153人)が「いいえ」と違和感を抱いていないことがわかる。
 第3問として、「現代の神社は、地域社会の中で、宗教施設としてどのような役割を果たしていると思うか、具体的に記入せよ」と聞いたところ、「困った時の神頼み、祈願の場」(51人)、「宗教よりも地域イベント・交流のため」(47人)、「自己を見直し、支えになる」(24人)、「伝統・習慣としての役割」(24人)という回答が上位を得た。
 一方、寺院の先祖供養に対しては、「葬式や仏事法要などの先祖供養を必要と思うか」(第4問)と尋ねたところ、約70パーセント(144人)が「必要」と答えた反面、約20パーセント(39人)が「どちらでもない」と表明しているのは注目される。
 第4問で「必要」と答えた人にさらに「葬儀形態」や「葬儀の場」、「葬儀にかかる費用」などについて尋ねてみると、「伝統的で一般的」な形態を良しとする人が64パーセントともっとも多く、葬祭の場は自宅(40人)を筆頭に菩提寺(35人)、町会館(23人)、葬祭場(25人)と多様である。葬儀にかかる費用については、かかりすぎと思う人と、よくわからないという人がほぼ同数であった。
 これらの回答には、現代の若年層の人たちの宗教意識や宗教観を考えるうえで、様々な示唆が含まれているように思われる。神社や寺院に対しては、冠婚葬祭と結びついて、伝統や習慣を踏襲するために、ある一定の役割を果たしていると認識されているようである。しかしその反面、そうした人生儀礼と宗教施設の関わりすら、もはやどんどん薄れていっていることも窺われるのである。
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