「函館市史」トップ(総目次)
第2章 高度経済成長期の函館
第3節 函館の産業経済の変貌
4 函館の商業・流通の変化
商業の再開から復興へ
高度経済成長下の函館商業
商店街の消長と小売業の変貌
小売業の構造変化
卸売業の構造変化と流通センターの建設
|
卸売業の構造変化と流通センターの建設 P434−P438
さきにみたように、昭和41年刊の『都市診断 北海道篇』は、函館の卸売商人の底力を評価していた。昭和30年代から40年代にかけての函館卸売業の実力を、商店数、従業者数、販売額の全道に占めるシェアからみたのが、表2−19である。
第2−19 卸売業の主要都市別シェアの推移(昭和33〜45年)
単位:%
|
商店数
|
従業者数
|
販売額
|
昭和33
|
37
|
41
|
45
|
33
|
37
|
41
|
45
|
33
|
37
|
41
|
45
|
全道計 |
100.0
|
100.0
|
100.0
|
100.00
|
100.0
|
100.0
|
100.0
|
100.0
|
100.0
|
100.0
|
100.0
|
100.0
|
8都市計 |
66.0
|
63.9
|
62.5
|
65.9
|
81.5
|
81.9
|
79.1
|
82.8
|
84.9
|
88.4
|
86.7
|
87.5
|
札幌市 |
21.8
|
24.8
|
25.7
|
27.7
|
32.4
|
37.4
|
39.2
|
42.3
|
38.7
|
48.7
|
52.3
|
51.3
|
函館市 |
9.6
|
8.2
|
8.2
|
7.6
|
9.0
|
7.7
|
7.2
|
7.4
|
6.7
|
5.6
|
5.8
|
6.0
|
小樽市 |
12.1
|
8.5
|
7.0
|
5.6
|
14.1
|
9.5
|
7.7
|
6.0
|
17.7
|
9.9
|
6.3
|
4.0
|
旭川市 |
9.6
|
9.9
|
8.7
|
8.8
|
10.1
|
12.2
|
10.3
|
11.0
|
7.8
|
10.9
|
9.5
|
10.4
|
室蘭市 |
3.3
|
3.3
|
3.5
|
4.6
|
3.5
|
3.5
|
3.4
|
3.4
|
2.8
|
4.0
|
2.8
|
4.3
|
釧路市 |
3.0
|
3.2
|
4.0
|
4.5
|
3.8
|
4.1
|
4.4
|
4.9
|
3.7
|
3.5
|
4.2
|
4.8
|
帯広市 |
4.0
|
3.9
|
3.5
|
4.7
|
4.8
|
4.8
|
4.7
|
4.8
|
5.2
|
4.1
|
3.7
|
3.5
|
北見市 |
2.7
|
2.1
|
1.9
|
2.5
|
2.8
|
2.7
|
2.1
|
2.9
|
2.5
|
1.8
|
2.2
|
3.2
|
北海道立総合経済研究所『北海道経済の現況と課題』より作成 |
昭和33年の函館の卸売業は、商店数で札幌市の21.8パーセント、小樽市の12.1パーセントにつぐ、9.6パーセントで旭川市と並び第3位、従業者数では、札幌市の32.4パーセント、小樽市の14.1パーセント、旭川市の10.1パーセントについで第4位の9.0パーセント、販売額では札幌市の38.7パーセント、小樽市の17.7パーセント、旭川市の7.8パーセントについで第4位の6.7パーセントである。札幌市と小樽市をあわせると、商店数で33.9パーセント、従業者数で46.5パーセント、販売額が56.4パーセントで、すでに札樽圏に卸売機能が集積しつつあったことをうかがうことができる。
また、商店数の比率を1とした時の札幌市の従業数の比率が1.5、販売額の比率が1.8ポイントである。小樽市がそれぞれ1.2、1.5ポイント、旭川市が1.1、0.8ポイント、函館市が0.9ポイント、0.7ポイントである。札幌市が1商店あたりの従業者数も、販売額も大きいことを知ることができる。4市のなかでは、函館市は1商店あたりの従業者も、販売額も劣っていた。
昭和45年になると、札幌市への卸売機能の集中がさらに進み、商店数で27.7パーセント、従業者数で42.3パーセント、販売額では全道のなかばをこえる51.3パーセントを占めるにいたった。これに対して、小樽市は商店数で5.6パーセント、従業者数で6.0パーセント、販売額で4.0パーセントと急落し、卸売業者の札幌への移転が進んだ。函館市は比重を低下させながらも、商店数で7.6パーセント、従業者数で7.4パーセント、販売額で6パーセントを維持していた。
経済の高度成長、第3次産業の肥大化にともない、物資流通量が増大化の一途をだどり、経済活動を効率的におこなうために、物的流通の近代化がもとめられた。函館圏流通センターの建設が具体化したのは、昭和45年のことである。函館市とその近郊に分散している青果市場や卸売業者、倉庫・運輸業者を流通センターに集め、流通機構の整備と業者の経営の近代化を企図した。函館市と上磯、七飯、大野町の1市3町で組織した函館圏開発事業団の手で、47年から函館市西桔梗野に広大な用地造成がすすめられた。49年には主要施設となる総合卸売団地の1期工事分と中央卸売市場が完成した(『函館圏総合開発計画書』、昭和49年11月22日付け「毎日」)。
総合卸売団地は、函館市内の繊維、食料品雑貨、住宅関連資材などさまざまな業種からなる58の卸売業者が46年に協同組合函館卸センターを結成して建設にかかっていたもので、第1期分22社の社屋が完成して移転し、49年11月21日には卸センターのシンボルである組合会館で落成式がおこなわれた。卸売業者の西部地区からの大量移転は、同地区の過疎化に拍車をかけることになり、跡地の利用による再開発が問題となった。中央卸売市場は函館市が生鮮食料品の安定供給をはかるなど流通改善対策の一環として建設したもので卸売市場法第5条にもとづく中央卸売市場整備計画が公表されたのは昭和47年2月のことである。49年11月に建物建設工事が完成すると、同年12月に函館市中央卸売市場設置条例および函館市中央卸売市場業務条例を議決し、50年3月5日に開設許可をうけ、同11日に業務を開始した(昭和49年11月14日付け「読売」、50年3月11日付け「道新」)。同市場の取扱高は図2−25のとおりである。
函館中央卸売市場には、卸売業者として丸果函館合同青果と東一函館青果の2社が参加し、朝市の渡島そ菜市場も、これを機に丸果と合併することになり、青果物のセリは中央卸売市場に一本化された。朝市の青果物仲卸業者14社のうち9社も同市場に入居し、函館青果卸売協同組合を組織した。関連事業者として青果物以外の食料品卸売場には、塩干物15、食肉2、鶏卵2、漬物6、食料品7、こんにゃく1、納豆4、蒲鉾・惣菜6、海産・珍味3、雑貨5の51業者が出店し、利便施設の9業者と函館市場中央商店会を結成した(「函館市中央卸売市場業務概要(昭和五〇年〜五九年)」)。これら関連業者は市場に仕入れにきた青果業者が、塩干物などの食料品や雑貨を一緒に買えることをねらいに入居したのである。朝市からは主だった青果、食料品卸売業者60店ほどが出店したが、中央卸売市場に店をだした卸業者の大部分は朝市にも店を残して営業を続けた。そのため、規模は縮小されたが、極端な落ち込みはなく、新しい事態に対応するために体質の改善が模索された(昭和53年3月15日付け「読売」)。運輸・倉庫団地も、函館市内および渡島、檜山管内の運輸・倉庫業・自動車整備業25社が、函館流通事業共同組合を結成し、トラックターミナルなどの施設の建設が50年から始まった(4月22日付け「日経」)。おりからの不況で流通センター全体の完成は予定よりずれ込んだが、昭和52年度に第2期工事が始まり、全体の完成は53年度であった。
流通センター全景(左)と初せりの様子(右) |
|
しかし、この頃から小売業の業態が大きく変化し、消費者ニーズの多様化や社会の情報化がすすみ、製造業や小売業などが卸売業に参入するなど、全国的な流通環境の構造変化に、函館の卸売業もまきこまれた。順調に拡大してきた函館の卸売業は、昭和57年には純化が目立ちはじめ、54年には商店数1310、従業員数1万1908人、販売額が5789億円ほどを数えたが、57年には従業者数が1万1641人に減少している(『函館市の商業−昭和五四年商業統計調査結果−』、『函館市の商業−昭和五七年商業統計調査結果−』)。
表2−20によって道内の卸売業の動向をみると、昭和54年の札幌市は商店数で43.0パーセント、従業者数で49.8パーセント、販売額で59.2パーセントを占め、圧倒的な地位を占めるにいたった。63年においても比率にそれほど変化はなく、販売額において道内の6割ちかくを占め、北海道の卸機能が集中している。一方、函館は、商店数が54年の7.8パーセントから63年の6.9パーセントに、従業者数が54年の6.8パーセントから63年の6.0パーセントに減少したが、販売額は54年の5.1パーセントから63年の4.8パーセントとわずかな減少にとどまった。63年の販売額のシェアは、旭川市の6.7パーセントについで3位を占め、帯広市や釧路市を上回っている。函館のシェアの低下には基幹産業であった造船業が48年の石油危機を契機とする造船不況によって、大規模な合理化を余儀なくされ、函館ドックの縮小や社外企業の倒産や廃業があいついだことも影響しているのであろう。
昭和63年の札幌の卸売業は、販売額で元卸の50.7パーセント、中間卸の66.7パーセントを占め、これら高次流通段階の卸売機能を集績し、道内の卸売流通の中核となっており、しかも、札幌の元卸、中門卸の大部分が道外商社の手ににぎられている。他方、函館をはじめ、旭川、帯広、釧路などの地域中心都市は、高次流通段階の卸売機能を若干分担しているにすぎず、道外商社からみると小規模な道内商社を中心に、低次の流通段階において各地域内の小売や産業用需要にこたえるための最終卸機能を果たしている。高次卸売機能の札幌への集中と最終卸売機能の地方都市への分散化は、店舗経営規模の道外商社と道内商社間の、札幌と他都市間などの格差を拡大している。
第2−20 卸売業の主要都市別シェアの推移(昭和54〜63年)
単位:%
|
商店数
|
従業者数
|
販売額
|
昭和54
|
60
|
63
|
54
|
60
|
63
|
54
|
60
|
63
|
全道計 |
100.0
|
100.0
|
100.0
|
100.0
|
100.0
|
100.0
|
100.0
|
100.0
|
100.0
|
8都市計 |
78.8
|
78.0
|
77.7
|
83.8
|
83.7
|
83.0
|
87.5
|
87.4
|
86.5
|
札幌市 |
43.0
|
43.2
|
43.8
|
49.8
|
51.3
|
51.5
|
59.2
|
60.4
|
59.3
|
函館市 |
7.8
|
6.9
|
6.9
|
6.8
|
6.0
|
6.0
|
5.1
|
4.3
|
4.8
|
旭川市 |
9.3
|
9.1
|
9.0
|
10.0
|
9.4
|
9.1
|
7.7
|
7.1
|
6.7
|
室蘭市 |
3.1
|
2.9
|
2.5
|
2.7
|
2.2
|
2.0
|
2.1
|
1.6
|
1.6
|
釧路市 |
6.3
|
5.4
|
5.2
|
5.2
|
4.6
|
4.4
|
4.9
|
4.6
|
4.2
|
帯広市 |
3.7
|
4.4
|
4.3
|
4.3
|
4.6
|
4.6
|
3.3
|
4.1
|
4.5
|
北見市 |
2.7
|
3.1
|
3.0
|
2.8
|
3.1
|
2.9
|
2.9
|
3.0
|
3.0
|
苫小牧市 |
3.0
|
3.0
|
3.0
|
2.3
|
2.5
|
2.4
|
2.2
|
2.3
|
2.3
|
平成元年度版『北海道経済白書』より作成 |
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