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通説編第4巻 第6編 戦後の函館の歩み


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第2章 高度経済成長期の函館
第3節 函館の産業経済の変貌
4 函館の商業・流通の変化

商業の再開から復興へ

高度経済成長下の函館商業

商店街の消長と小売業の変貌

小売業の構造変化

卸売業の構造変化と流通センターの建設

高度経済成長下の函館商業   P424−P427

表2−15 函館商業の歩み
年次
商店数(店)
従業者数(人)
商品販売額(万円)
昭和27
29
31
33
35
37
39
41
43
45
47
49
51
54
57
4,169
3,565
4,796
4,814
4,816
5,117
5,589
6,103
6,137
6,518
7,224
7,511
8,181
8,828
9,282
12,102
12,175
14,980
19,791
22,079
25,115
29,388
32,389
33,010
34,148
38,080
37,757
41,623
37,551
37,445
2,611,410
3,841,717
3,944,608
4,758,491
5,604,794
8,348,373
11,862,486
15,970,083
18,159,883
23,761,303
28,893,154
45,251,491
68,227,719
85,509,760
100,008,473
『函館市史』統計史料編より作成
 大幅な統制解除によりようやく活況を呈しはじめた函館商業のその後の歩みを、総商店数、総従業者数、総商品販売額からみたのが、表2−15である。総商店数をみると、昭和27年4169店、37年には1.2倍の5117店、47年には1.7倍の7224店、57年には2.2倍の9282店。総従業者数は、昭和27年1万2102人、37年には2.1倍の2万5115人、47年には3.1倍の3万8080人、57年には3.1倍の3万7445人。総商品販売額は昭和27年261億円、37年には3.2倍の835億円、47年には11.1倍の2889億円、57年には38.3倍の1兆1億円である。昭和30年代以降の第2次産業を中核とする日本経済の著しい成長の余波をうけて、函館でも昭和30年代中頃から昭和50年代にかけて商業は急激に膨らみ、昭和27年を基準にすると、57年には、総商店数が2.2倍、総従業者数が3.1倍、総商品販売額が38.3倍に達したのである。大量消費時代が到来し、函館でも第3次産業の肥大化がみられる。
 この間の北海道経済をみると、日本経済に占める地位を次第に低下させていき、産業構成からみると、第1次産業の減少、第2次産業の停滞、第3次産業の肥大化と都市への集中が顕著にみられた。函館商業の膨張も、こうした流れに沿うものであった。
表2−16 本道の卸売・小売業の推移
a.商店数  単位:%
 
昭和31
33
35
37
39
41
43
45
全道計
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
支庁計
47.7
41.6
41.5
38.7
36.6
35.2
33.3
31.9
市計
52.3
58.4
58.5
61.3
63.4
64.8
66.7
68.1
8市計
39.5
41.1
41.3
43.9
45.3
46.6
48.7
50.1
札幌市
10.9
11.9
13.0
14.9
16.3
17.5
19.1
19.8
函館市
7.7
7.5
6.6
6.8
6.8
6.8
6.7
6.7
小樽市
5.9
5.9
5.8
5.4
5.3
5.2
5.1
4.7
旭川市
6.0
5.9
5.8
6.1
6.2
6.3
6.4
6.5
室蘭市
2.5
2.8
2.8
3.1
3.1
3.2
3.3
3.5
釧路市
2.7
2.9
3.1
3.4
3.5
3.6
3.8
4.0
帯広市
2.4
2.6
2.7
2.7
2.8
2.7
2.8
3.1
北見市
1.4
1.5
1.4
1.4
1.3
1.4
1.6
1.7

b.常時従業者数  単位:%
 
昭和31
33
35
37
39
41
43
45
全道計
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
支庁計
37.3
29.3
27.3
24.6
22.5
22.3
21.9
21.6
市計
62.7
70.7
72.7
75.4
77.5
77.7
78.1
78.4
8市計
50.5
53.6
55.3
59.2
60.7
61.0
61.4
61.6
札幌市
16.7
18.9
21.4
24.1
26.2
26.7
26.8
27.2
函館市
7.9
7.6
7.0
7.2
7.3
7.2
7.2
6.9
小樽市
7.8
7.7
7.1
6.2
5.9
5.7
5.3
4.7
旭川市
7.0
6.9
7.2
8.1
8.0
7.8
8.0
8.0
室蘭市
2.8
3.5
3.3
3.7
3.6
3.7
3.6
3.6
釧路市
3.3
3.6
3.9
4.1
4.1
4.3
4.5
4.9
帯広市
3.2
3.4
3.4
3.6
3.8
3.6
3.8
4.0
北見市
1.8
2.0
2.0
2.0
1.9
2.0
2.1
2.3

c.年間商品販売額  単位:%
 
昭和31
33
35
37
39
41
43
45
全道計
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
支庁計
14.9
12.5
11.6
10.4
11.1
11.7
12.5
市計
85.1
87.5
88.4
89.6
88.9
88.3
87.5
8市計
72.2
76.5
78.0
78.9
78.2
76.9
75.9
札幌市
31.4
39.0
40.7
45.3
44.6
42.8
41.6
函館市
6.5
5.4
5.8
5.8
6.0
5.9
5.9
小樽市
13.5
11.2
8.4
6.2
5.7
5.0
3.9
旭川市
7.0
9.1
9.6
9.5
8.8
9.2
9.2
室蘭市
3.2
2.8
4.0
3.2
3.1
3.6
4.0
釧路市
3.9
4.0
3.8
3.7
4.3
4.8
4.9
帯広市
4.4
3.5
3.9
3.5
3.6
3.7
3.7
北見市
2.3
1.4
1.8
1.7
2.1
1.9
2.9
北海道立総合研究所編『北海道経済の現況と課題』より作成
 昭和30年から昭和45年にかけての時期を分析した『北海道経済の現況と課題』(北海道総合経済研究所編)によれば、北海道の卸・小売業の総商店数は、昭和30年代初頭の約6万店から昭和45年には1.6倍の約9万7000店、総常時従業者数は31年の約20万人から45年には、2.5倍の約50万人、年間総商品販売額は、33年の約7300億円から45年には5.5倍の約4兆円に伸長した。表2−15によって函館の場合をみると、総商店数は31年から45年に1.4倍、総従業者数は31年から45年に2.3倍、総販売額は33年から45年に5.0倍の伸長をみているが、すべてで全道の伸長を下回っている。
 その内訳をみたのが、表2−16である。札幌市以下8市への商業機能の集中が顕著である。昭和45年には、全道の総商店数の50.1パーセント、総従業者数の61.6パーセント、総販売額の75.9パーセントを8市で占めている。
 とくに札幌は、総商店数の19.8パーセント、総従業者数の27.2パーセントを占め、総販売額では41.6パーセントに達し、他にぬきんでた存在になった。戦前に道内の商圏を二分した小樽と函館のうち、小樽は商業機能、なかでも卸売機能を隣接する札幌に吸収されていき、昭和33年に全道の13.5パーセントを占めていた総販売額は、昭和45年には実に3.9パーセントに落ち込んだ。函館の場合は、総商店数が昭和31年の7.7パーセントから45年の6.7パーセント、総従業者数が31年の7.9パーセントから6.9パーセント、総販売額が6.5パーセントから5.9パーセントと、低落傾向にあった。おそらくは、地域の中核都市として、後背地である道南地域の経済の動向を反映するものであろう。また、支店、出店経済の街といわれた札幌への商業機能の極度の集中化傾向も、さまざまな格差や歪みをもたらしたとされる日本経済の高度成長と無関係ではない。
 この時期の函館の商業について、北海道都市学会監修の『都市診断 北海道篇』(北海道新聞社編)は、「函館は小樽とよく比べられる。卸し売りにおいて共通点は多い。三十五年と三十七年を比較して小樽の販売高は横ばいながら全道の比重は四パーセントも落ち、旭川に追い越された。これに対し函館の卸し売りは二十億円も増加し、全道比もわずかではあるが上昇している」とし、函館の商業は底力をもっているのだから「根強い商業に活路を」見出すべきだとして、「函館の卸し売り商人はどこへ商品をさばいているのだろうか。一例として衣料品問屋の場合をみると、仕入れは大阪が一番多く、半ば近い。あとは東京と名古屋である。卸し先は函館市内よりも渡島・檜山が多く、日高・胆振の商圏もまだ残っている。これは函館商人の底力もあろうが、道南が函館の後背地として健在であることを示している。つまりやせたりといえども一城の主なのだ。函館にデパートは3つある。しにせぞろいの商店街には新興地のにぎわいはないが、デパート商法は花やかだ。品目別の売り上げ高でやはり伸びの著しいのは衣料品だが、そのほかも上昇カーブを描いている。札幌は全道売り上げの半ばを占めるが、次は函館である。小樽・旭川がこれに続く。これに象徴されるように小売りの将来も期待できよう。」と述べていた。
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