通説編第3巻 第5編 「大函館」その光と影


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第2章 20万都市への飛躍とその現実
第2節 水電事業市営化問題
3 坂本市長2期目と水電問題

休戦調停から新たな動きへ

局長裁定

市会の方向転換

市長派と反市長派

市長派と反市長派   P2730

 函館の復興を電気事業買収交渉より優先と主張して誕生した函館振興会(理事長谷川定次)は、交渉休止中の10年1月14日、帝国電力の岡田取締役来函の折りに会談を持った。出席者は、理事長の谷川定次をはじめ、登坂良作、田中正、宮川義雄らで、滞納料金の取り立ては断線によらず寛大に、電車・電灯・動力の施設改善への復興支援などを要求した。さらに3月の市会で谷川は、坂本市長の責任を追及する動議を提出、賛成20、反対3で可決された。決議案は、「坂本市長統督にある函館市政の紊乱は、其極に達し財政は行詰り、市の信用は失墜し、復興途上にある市民は深憂不安に堪えず、此の責任を負い市長坂本森一氏の処決を望む」というものだった。
 函館振興会の動きに対し、3月6日、若松町民代表が「市長不信任案は市民の輿論を無視し一部議員の感情に依る不当の議決…復興函館建設のため邁進せられ度」との調印者数百名におよぶ陳情書を市長に手渡した。翌日には、市勢作興会主催の市民大会が開催され、函館市の権益擁護および市長留任を決議し、市長不信任案に賛成した20人の市議に辞職勧告書を送致するに至った。この日から市長激励留任の陳情書を提出する町会や衛生組合が続出した。
 一方振興会派の市政批判演説会も次々と開催され、登坂良作、谷川定次らが、市長の施政を論駁する演説を行った。
 市内は対帝国電力というより、坂本市長信任派と不信任派の抗争という様相が色濃くなっていった。
 函館市内が信任と不信任派で騒然となっていたとはいえ、その主要因である帝国電力との交渉問題が何ら解決されたわけではなく、休止状態が継続されたままであった。再び電気料滞納者への督促が開始され、6月5日には断線も開始された。しかし大火災害の復興が急務であると同時に、復興事業推進に帝国電力の協力が不可欠(特に復興区画整理事業に伴う電車軌道、電柱、地下埋設設備等の移設など)ということもあって、対帝電運動がより先鋭化されることはなかった。

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