通説編第3巻 第5編 「大函館」その光と影


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第2章 20万都市への飛躍とその現実
第2節 水電事業市営化問題
3 坂本市長2期目と水電問題

休戦調停から新たな動きへ

局長裁定

市会の方向転換

市長派と反市長派

局長裁定   P270−P271

 大火以後復興業務に忙殺され交渉も棚上げ状態となっていたが、7月6日、札幌逓信局長(山崎晃から祝島に交代)は、停滞料金の支払いに関する裁定書を発表した。「裁定書」は、「本年三月二十一日発生せる大火の罹災需用者は、停滞料金半月分宛を来る八月以降完済に至る迄毎月」「罹災者以外の需用者は、停滞料金一ヶ月分宛を七月以降完済に至る迄毎月」それぞれ支払うことというもので、会社は「需用者の停滞料金支払の事情を酌み、金弐万円也を公共事業資金として本年十月末日迄に寄付すること」となっていた。「理由書」によると、市と函館水電との間に於ける料金値下げ紛争は、「本年三月四日、両当事者の間に紛争停止に関する協定成立…右裁定方を札幌逓信局長に無条件一任することとなり…裁定内容につき考慮中のところ偶々過般の函館市の大火により一時これが裁定方を延期して今日に至れり。しかるに大火後に於ける同市の秩序も著しく恢復する等、右裁定をなすを可とすと認めらるる時期に到達したる」により、停滞料金の支払い方法に関し裁定をするというものであった。特に今回の罹災需用者は、普通の需用者より支払開始期を1か月遅くし、かつ2倍の期間内に支払うこととしたと被災者への配慮が述べられている。
 この裁定に対し、翌7日、「旧期成同盟残務整理委員」(坂本作平、長岡清三郎ら)は、買収交渉に入ることが前提の一時休戦だがその市民の意見が汲み込まれておらず、かつ市民の負担力の実際に適さない裁定案だとして、容認し難いとの声明を発表した。さらに猶予期間を置き充分考慮するよう逓信大臣ならびに札幌逓信局長に陳情するとともに、買収交渉はこの裁定に拘らず促進するよう市長に対して要望した。坂本市長も23日、裁定は報償契約の精神を尊重するのが前提で、停滞料金の支払いも買収交渉が開始されてからであるとの声明書を発表した。このため局長は、坂本市長の声明は一般需用家が支払を拒否してよいという意志ではないと、函館市民の自重を要望する談話を発表するに至った。
 一方函館水電は、28日の臨時株主総会で、総資本金2800万円への増資と帝国電力株式会社への社名変更(8月1日から、以下帝国電力と略す)を決定した。この結果、市が会社総体を買収することは不可能という状態となった。
 9月に入ると、函館水電は停滞料金未納者に料金督促状を発送し、20日、10数戸に対しての断線を決行した。坂本市長は、札幌逓信局長へ、断線は裁定条項の違反行為であり会社に対し警告するよう強硬に要望したが、水電は止むを得ない措置であったと釈明するのみだった。さらに10月に入り帝国電力の穴水専務は、市長との交渉を拒否、新聞は「市と帝電の対立激化」(9年10月2日付「函日」)と報じた。
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