通説編第3巻 第5編 「大函館」その光と影 |
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第2章 20万都市への飛躍とその現実 市会の方向転換 |
市会の方向転換 P271−P273 10月16日、坂本市長はこれまでの経過を声明書「買収交渉の経過に就て」として発表した。それは昭和8年8月8日函館市が満場一致を以て報償契約に基く会社の事業買収を決議して以来、今日までの事実経過をまとめたもので、市長の電気事業市営化に対する期待感を正直に表明したものだった。しかし、今後の展開に関しては、報償契約訴訟の勝訴以外の具体的な展望が示されたというものではなかった。
この間交渉決裂状態にあった帝国電力は、松蔭町で料金滞納の50数軒の断線を実施するという強硬手段をとる傍ら、裁定期限直前の10月28日には札幌逓信局長の裁定に基づいた2万円の寄付金を函館市へ送付した。 このような状況の中、衛生火防組合長、旧期成同盟の幹部らが会合し、電気問題の解決促進を図ろうとする「市政作興会」(会長長岡清三郎)が12月11日に発会した。大火による復興を機に、長期化する問題を何とか解決しようという新しい運動の動きがみえてきた。また復興第一を掲げ、対帝国電力問題先鋭化の緩和を図ろうとした「復興座談会」も札幌で開催され、函館市復興会正副会長(道庁長官、内務部長)をはじめ、道庁関係者や函館市長、助役、正副議長、商工会議所会頭、代議士、道会議員、市会議員らが出席した。席上、長官は、復興第一を目的とする上から買収問題は報償契約確認訴訟の判定後まで留保し、裁定による停滞料金については支払能力のある者は進んで払い、支払困難の者は猶予するよう市当局が取り計うこととしてはと述べ、座談会は、長官のこの意向を了承して終えた。 一方市会でも21日、緊急動議で帝国電力買収交渉休止に関する意見書提出の建議案が上程され、賛成20、反対17で可決された。こうして買収交渉は、一時休止の方向へと転換し始めたのである。なおこの間に帝国電力の穴水専務は、大日本電力(黴)(北海道電灯を改称)専務、さらに帝国電力の会長に就任している。 |
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