通説編第3巻 第5編 「大函館」その光と影 |
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第2章 20万都市への飛躍とその現実 第7節 都市の生活と新しい文化 1 市民生活の変容とその背景 2 函館の百貨店 百貨店を利用する「突端人種」 |
百貨店を利用する「尖端人種」 P704−P705 この百貨店の顧客層を「尖端人種」と表現する向きもあった(『近代函館』昭和9年)「華やかな街のエンプレス」である百貨店に親しむ人々を、皇后(エムプレス)に接する「尖端」的な、上流社会の人々と見ようとしているようでもある。しかし、実際は、多様な人々が、この皇后との交流を楽しんでいた。「銀行員や浜の仲買の人々」、角巻姿で子供連れの「在の方のお内儀さんたち」「木古内線その他の在からわざわざ上ってくる団体」(昭和6年2月4日付「函新」)があげられていたり、前出の『近代函館』の紹介する「デパート気分」も次のようなものなのである。「快いタイルと明るい照明、香りと色と音、マダム、女学生、サラリーマン、お主婦さん、商人、女中、女給、不良少年、デパート拝観のモダントッツアン、ルンペンと幾十万の人足、それらのものが渾然と織りなすデパート気分こそ、縮刷された街の感触であり都会モダニズムの母胎である」。マダムからルンペンまで、都会のすべての階層の人々が「デパート気分」をつくっている、というのである。
公設市場の価格調べは、米、麦、いも、味噌、醤油などの食用品があげられているだけなので比較できるものが少ないが、おおむね、同程度か、百貨店の方が安い、という様子がみられる。多くの人が百貨店に向う事情ともなっていたと思われる。 一方で、当時の庶民には縁のうすいと思われる高価な商品も、「尖端人種」の需要を見込んでか、広告にもよくみられる。の「ドニチ特売」でも、京御召15円、結城御召15〜20円というような商品があげられているし、高級時計白金八型28円、鴬一羽5〜30円、ポータブル蓄音器20円、パラソル1〜30円、本パナマ帽1〜30円(いずれも昭和6年の新聞広告より)というような例もみられる。諸職人の日給が2〜3円(『函館市史』統計史料編の業種別賃金表、昭和5年の数値)という頃のこれらの価格は、かなりの「高級」な商品ということになろう。 |
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