通説編第3巻 第5編 「大函館」その光と影 |
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第2章 20万都市への飛躍とその現実 水電会社断線を強行 |
水電会社断線を強行 P266−P267 6月に入り連合町民大会が続々と開催された。一方函館水電は、7月31日、10円以上の延納者1500余戸に対し、支払いがない場合は取り引きを断る旨の督促状を発送した。断線という事態を想定し、市内は緊張感に包まれた。「解決の糸口をつかむためには最悪の手段も」との決断から、会社側は、8月21日朝7時断線決行を予定したが、函館警察署の要請で中止された(葛西民也「電気買収問題の一裏面史」『続函館市史資料集』第1号)。これに続き23日、市会は、函館水電へは「断線すべからず」、監督官庁へは「断線せしめざる様」との警告を可決した。 函館営業所支配人兼技術部長に就任した葛西民也は、10月28日、幹部職員を召集し、30日朝の断線決行を決定した。第1次断線予定戸数は550戸、旅館、カフェー、湯屋など多額延滞未納者が対象とされた。 断線決行に対し、松風町民大会は、「此際徹底的に忘恩の水電の膺懲を期す」として同情消灯の実施(11月2日から)を決定した。その後続々と同情消灯に入り、その数は17町1万1200戸におよび市中は暗闇状態になった(11月2日付「函毎」)。この事態に対し、監督官庁である逓信省が「静観」の姿勢をとったため、両者が交渉のテーブルへ就くことも難しくなり、函館市は暗闇の街と紹介され、市と函館水電との紛争は全国的に知れ渡っていった。 11月4日開催の第5回市民大会は、徹底抗戦を訴え、市会議員は交渉委員を道庁・札幌逓信局などへ派遣すること、各町代表者は上京して各方面への陳情を行うことを決定した。これらの動きに対し市長は、目的達成のため一層の努力をすること、会社との取引きは断絶する旨の声明を決議している。 一方函館水電は、現在未収入金となっている63万4000円は期成同盟会の扇動によって生じたものであるとして、11月7日、東京地方裁判所へ期成同盟会の坂本作平、泉泰三、当摩彦太郎、斎藤友二郎、青塚喜七郎、野田房太郎の6人に対する損害賠償(20万円)請求の訴訟を提起した。さらに10日には函館地裁へ函館市役所の電灯料未納額(3万円余)の支払命令の手続きを行なった。函館市は命令書が届いた日に直ちに応訴した。 対応に苦慮していた監督官庁の札幌逓信局は、坂本市長と葛西支配人を札幌に呼び、24日、「現行電気料金は不公正とは認められず」としたうえで、函館水電には「電力の充実、サービスの改善等」を、市民には「電気の取引を速やかに旧態に復すよう」に善処を望んだ。しかし係争中の報償契約には触れられていなかったため、二十七日、各町組合役員、電気問題実行委員らが協議会を開催し、「市民は問題解決まで会社との取引を断絶し、料金未払を継続すること」を決議し、翌28日開催の第6回市民大会では、市長が函館市権益擁護のための市民の結束を求めた。 解決への光明が見えない中、同情消灯反対同盟会も誕生した。27日、第1回同情消灯反対演説会が開かれ、岡崎喜一郎、島田忠司、野上繁らが、「暗黒より光明へ」「争議は何処へ行く」「郷土を明るくせよ」等々、先の見えない闘争への苛立ちを訴えた。 混迷の中市長の任期満了が迫り、坂本市長が再選され、8年12月27日5代目市長に就任した。引き続き水電問題は、坂本市長に委ねられたのである。 |
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