「函館市史」トップ(総目次)
第2章 20万都市への飛躍とその現実
第2節 水電事業市営化問題
1 佐藤市長と水電問題
函館水電株式会社の創立
報償契約の締結
函館水電の合併問題
買収交渉への取り組み
仮契約締結と反対運動
市長買収案の終結
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仮契約締結と反対運動 P255−P257
10月に市議の改選が行われ新市会がスタートしたが、懸案事項である水電買収問題については、買収を求める意見が大勢だった。市会議員協議会は、15名(内9名は改選前からの委員)の新水電買収交渉委員を選出し一切を委任することとした。交渉委員会は、5名の小委員会に付託して価額算定に入ったが、あくまでも報償契約に準拠して価額を決定すべきとする考え方と、会社側が経営権を行使できる報償契約満期までの5か年分を考慮すべきとする2つの考え方の折り合いが付かず、評価も最低1200万円から最高1400万円までとなり、価額の一本化には至らなかった。結局、交渉一切は市長一任となり、仮契約締結後に委員会で賛否を決することになった。佐藤市長は、「市永遠のために水電買収は好機、多少評価は発奮しても」仮契約を締結したい旨を表明した(12月5日付「函新」)。
このような中にあって、水電問題研究会(幹事河辺嘉一郎)・労働農民党函館支部(同党所属市会議員は高嶋末太郎、青野三郎)・民政党函館支部それに自治研究会の4団体は、10月に連合会を組織し、買収価額は「七百万円説を以て輿論に愬へ飽く迄戦ふべし」として歩調を共にすることにした。
12月4日から市と会社側との交渉が開始され、7日の第4回目の交渉で、「価格千四百万円」(市の支払額1360万円、重役が20万円寄付)で仮契約締結となった。引き続き午後、水電買収交渉委員会が開催されたが、「非承認派と承認派との議論沸騰し形成は余談を許さぬ状能」であったという(12月8日付「函新」)。
1400万円の仮契約の買収価格を不当とする反対派の動きも活発化した。まず函館弁護士有志団主催の買収反対演説会および市民大会が開催され、翌日は「水電市営は社会化として必然性ではあるが然し価格は正常ならず」とする水電不当買収反対連盟の演説会が開催された。この連盟は、市会議員松岡陸三らによって、仮契約締結直前の5日に組織された。続いて開催された市民大会では、仮契約の破棄、市の監督権を厳重行使することなど5項目を決議し、さらにこの決議に反対する市会議員の辞職勧告も決定した。
これらの動きに対し、市長は、「決して高からず妥当なものである」という買収案の内訳(固定財産…1347万3525円、増加建設費仮払など…32万9482円、貯蔵品他…19万6993円)を発表し、仮契約書も公表した。市会議員も2派に割れていた。1400万円の市長案推進を図る公正派と高値買収反対を唱える非公正派である。非公正派の反対連盟・労農党・新興倶楽部(会長谷川定次)・大興倶楽部(幹事長登坂良作)などは盛んに反対演説会を開催、町民大会での反対決議にも積極的に働き掛けた。
賛成の立場で積極的に演説会を開いたのは、岡田健蔵と鷹田元次郎の両市議のみだった。報償契約による900万円買収説を主張していた岡田だったが、大衆の利益を擁護するためには「高いが買う方法としては之よりない」と主張した。
18日の市会議員協議会に市長の案と覚書が提示された。覚書の内容は、(1)25日に市会および会社の総会で協議すること、(2)市公債の償還は5か年以内に随時借換をして償還すること、(3)大正16年1月31日までに市会、株主総会の決議が出来ないときは契約解除とすることなどだった。まとまらないまま25日の大正天皇の死により市会は翌2年1月7日に延期された。
一方会社側は、12月25日、東京で株主総会を開き、配当1割2分(据置)、記念配当1割2分、函館市に対する
事業および財産譲渡の件を可決した。
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