通説編第3巻 第5編 「大函館」その光と影


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第2章 20万都市への飛躍とその現実
第2節 水電事業市営化問題
1 佐藤市長と水電問題

函館水電株式会社の創立

報償契約の締結

函館水電の合併問題

買収交渉への取り組み

仮契約締結と反対運動

市長買収案の終結

買収交渉への取り組み   P255

 合併問題が中止という形で収束すると、市は覚書に基づき函館水電の買収を進めることになった。まず、電気事業調査に経験のある内田工学士に事業調査を嘱託し、市会議員による電気事業市営調査委員会(平出喜三郎、小川弥四郎、泉泰三、松下熊槌、藤村篤治、鷹田元次郎、登坂良作)を設置(5月18日第1回の委員会開催)、実地調査などを継続したが、議員の在任期間中(翌15年10月改選)には仮契約を締結して市会に提案することは出来なかった。その経過について佐藤市長は、15年の10月市会で、15年3月に市長と岡本専務・山本常務との交渉が始まったが、「買収価格の決定を見た上」で市会や株主の承認を得るという建前で進められた交渉は提示すべき価格の決定には至らず、提案できなかったと報告している(10月16・17日付「函新」)。
 また市長はこの経過報告と同時に、「価格算定根拠は報償契約があるが、報償契約に基く買収権は大正20年の契約満期時に発効するもので、現時点の買収ではすべて報償契約によることは出来ず、多少の斟酌も必要と考える」と価格算定の問題点を指摘したうえで、市営化は「営利会社における公益上の欠陥を補い、市民の利便を増進し、従来一会社が壟断せる利益を挙げて全市民一般に均霑せしむるにある」とその目的を明らかにしている。さらに買収価格の算定は、「一定の年限で買収公債を償還し得る確実な採算の取れる適当な価格」を考えていると報告している。
 市長の経過報告後、区会では「電灯電力料金値下げ復活に関する建議案」と「電車軌道舗装に関する建議案」が満場一致で可決されている。これは、会社が12年度から配当を1割から1割2分へ増やしている事実に基づく値下げ要求と、軌道内未舗装部分の解消の要望であった。そして同時に、買収交渉の取引条件でもあったのである。

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