通説編第4巻 第6編 戦後の函館の歩み


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第1章 敗戦・占領、そして復興へ
第3節 敗戦後の函館の産業経済
1 水産都市函館の変貌

北洋漁業の壊滅

マッカーサー・ライン

漁業制度改革と沿岸漁業

旧漁業権の消滅

漁業協同組合の成立

イカ釣り漁業の発展と後退

漁業協同組合の成立   P164−P166

 漁業協同組合の歴史は古い。沿革的には明治19(1886)年の漁業組合準則により、漁業権管理団体として発足した。この後、漁業組合は次第に経済事業をおこなうようになり、昭和初期の経済危機のなかで漁業協同組合と名称を変え、経済事業団体としての機能が整備された。しかし、太平洋戦争の戦局の進展に伴い漁業団体も国家統制の枠組みに組み込まれることになり、昭和18年3月水産団体法が公布され、戦時体制下の漁業者団体に改編された。団体法により従来の漁業組合と漁業協同組合は合併して漁業会となり、道府県の漁業組合連合会は道府県水産業会に、そして全国的には道府県連合会を統合する形で中央水産業会が作られた。漁業界全体を国家の統制下におき、戦争遂行のための協力組織とすることを目的にしていたのである(『函館市史』通説編第3巻参照)。
 この法律を受け函館では昭和19年5月8日漁業関係の設立委員が集まって函館漁業会の設立総会を開いた。総会では、会則と事業計画を決め、役員候補として会長に富永格五郎ほか6名の理事と3名の監事を推薦した(昭和19年5月9日付け「道新」)。
 漁業制度改革では、このような戦争協力、国策推進の役割を担った漁業会などの水産団体の解散が至上命令とされ、昭和23年12月2日に制定された水産業協同組合法の成立によって戦時統制団体としての漁業会は解散された。これに代り国際協同組合運動の理念に基づいた新たな漁業協同組合が誕生することになったのである。
 なおこの新しい法律に基づく組合には沿岸の一定区域(地区)に居住する漁民(従事者を含む)で組織する漁業協同組合(地区別漁協)と同一業種の漁業経営者で組織する業種別漁業協同組合がある。このほか水産加工業者の水産加工業協同組合もこの法律を根拠に作られることになった。市内における協同組合の設立の経過は不明であるが、新制度発足当初に設立された漁業協同組合は表1−25のとおりである。
表1−25 函館の漁業協同組合
a.地区別
組合員名
設立認可
組合長
組合員数(人)
経営者
従事者
函館市住吉町漁業協同組合
昭和24. 6.10
中谷武右衛門
200
134
334
同大森町漁業協同組合
同年   6.21
氏家一郎
125
45
170
同湯の浜町漁業協同組合
同年   7.25
久保田辰三郎
129
3
132
同万代町漁業協同組合
同年   7.19
勢田金次郎
80
219
299
同山背泊町漁業協同組合
同年   9.24
外山一夫
90
60
150
函館漁業協同組合
同年   9.24
笠置健吉
108
374
482
函館住吉漁業協同組合
昭和25. 9. 2
三沢予之一
126
17
143

b.業種別
組合員名
設立認可
組合長
組合員数(人)
(経営者)
函館延縄開発漁業協同組合
昭和24. 9.14
三崎誠一
28
北千島流網漁業協同組合
同年   9.22
森山芳次郎
30
渡島機船底引網漁業協同組合
昭和25. 7.19
川村善八郎
54
北太平洋沖取漁業協同組合
同年  10.24
四野見清蔵
27
函館機船底引網漁業協同組合
同年  12.14
釣谷九作
23
『昭和25年度水産業協同組合要覧』(北海道水産部漁政課)より作成
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