通説編第3巻 第5編 「大函館」その光と影


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第3章 戦時体制下の函館
第5節 戦時下の諸相
3  強制連行と捕虜問題

2 朝鮮人の強制連行

強制連行の開始

協和会の設立

朝鮮人の「移入」状況

函館市の事業場

東日本造船(株)の場合

函館船渠(株)の場合

朝鮮人労働者の抵抗

東日本造船(株)の場合   P1248−P1249

 このような記事に続き、9月15日付けの同紙には、亀田村港の東日本造船(株)函館工場で働く2人の「半島人」少年が、会社幹部に海軍志願を申出たことを伝えている。この2人とは、忠清南道論山郡出身の金村寅吉(17歳)と平安北道昌城郡出身の洪島学範(18歳)であるが、彼等の宿舎である第一清風寮の平原清一隊長は、二少年の日常について、次のように述べている。

 洪島と金村は今春訓練工として入社し、三ヶ月の期間も優秀な成績で過し、現在では洪島は木型工、金村も木型工として模範工と云つてもいい程真面目に勤めてゐます。つい先日も二人が、道具箱を手に何事か云つてゐるので聴き質してみると、仕事で米英をやつつけるのだと心に念じてゐたのだといふことで、私も激げしく心をうたれたものでした。

 また、この記事にある2人の中の洪島少年も、

 日本人として今第一にやらなければならぬ事は増産と、いま一つは軍人として第一線に起つ事だと思ひます。遠い半島から此処で働くのも船を造る事が大事な事だと思つたからです。戦争に征くのも、銃後の産業に奮闘するのも同じだと皆も云ふし、私もさうだと思つて一生懸命働いてゐましたが、伊太利が裏切つて降参した事を知つては、もう斯うしてはゐられないと思ひました。米英の奴等をひつ掴んで倒さなくては我慢が出来なくなりました。金村と相談して海軍の軍人となつて日本魂をもつた半島人の頑張りをみせてやると決心し、一緒に志願しました。

 と「決意の程」を語ったという。同紙には、「さあやるぞ 勝つまで止まぬ」との看板が張られた工場の外側で、上半身が裸のままで働く2人の少年の写真が載せられており、戦時下の緊迫した労働現場の状況を窺うことができよう。
 さらに、12月6日付けの同紙には、前日の12月5日、東日本造船と函館船渠で「造船戦士」として日夜働いている「半島人」に対し、万年橋国民学校と弥生国民学校で、函館連隊の市川中佐の査閲が行われたことを報じている。
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