通説編第3巻 第5編 「大函館」その光と影


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第2章 20万都市への飛躍とその現実

第4節 戦間期の諸産業
3 工業化の進展

5 造船業・機械器具製造業の動向

造船業・機械器具製造業を支えた経済的諸要因

統計より見た金属工業・機械器具工業(造船業を含む)

造船業の推移

機械器具製造業の推移

大火の影響と工場分布、工業組合の設立

統計より見た金属工業・機械器具工業(造船業を含む)   P471−P474

 大戦終了と共に大正9年には猛烈な反動恐慌が起きた。これが充分回復しない内に12年には大震災が起こり、ついで昭和2年の金融恐慌、5年の世界恐慌に巻込まれ、日本経済は大きな動揺を示した。大戦後の函館の造船所、鉄工場は表2−78のように工場数、生産額ともに停滞している。しかし、昭和期に入ると表2−79のように、北洋漁業の興隆をうけて昭和3年の落込みはあるにしても、全体としては上昇傾向で、昭和4年と10年に急上昇が見られる。これは前述したソ連国営企業の大量注文の影響であろう。表2−80は機械器具工業の昭和5年の生産額の内訳である。鉄製船舶製造業(函館船渠(株))とその他の船舶製造業(木造船所23工場)を比べれば、後者の方が生産額が大きい。表2−81は金属工業であるが、ブリキ缶製造業(缶詰用空缶、日本製缶(株))の生産額が飛抜けている。
 昭和6年の道内主要都市の金属工業、機械器具工業をまとめたものが表2−82である。室蘭が突出しているが、これは兵器の大砲、装甲板を製造する国策会社(株)日本製鋼所1社のものである。ここを除けば、函館は民需の分野でバランスよく発達しており、他の諸都市に比べると工場数、生産額ともに群を抜いている。このことを反映してか、第1章第2節図1−2(→造船業と鉄工業に及ぽした経済的諸要因)のように造船所、鉄工場数はこの時期も上昇を示している。人口は東北、北海道で最も多かった。
表2−78 大正後期の造船所と鉄工場
造船所(A)
鉄工場(B)
(A)+(B)合計
工場
職工数
生産額(円)
工場
職工数
生産額(円)
工場
職工数
生産額(円)
大正10
11
13
14
15
13
11
9
906
909
764
772
799,944
2,017,556
1,924,709
2,036,871
58
59
34
33
755
692
633
579
2,127,850
1,096,005
1,128,830
1,057,900
73
72
45
42
1,661
1,601
1,397
1,351
2,927,794
3,113,561
3,053,539
3,094,771
各年『函館区統計書』より
注)1 職工5人以上使用の工場
  2 鋳鉄所は鉄工場に含まれる。
  3 産業統計では昭和1年以降、造船業は機械器具工業に含めて表示しているので、比較のために合計を記した。
表2−79 昭和初期の金属工業・機械器具工業の生産額と従業員数
金属工業
機械器具工業
工場
職工数
生産額
工場
職工数
生産額

昭和1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12

22
25
27
27
26
25
24
30
28



183
401
215
217
318
220
238
263
235



1,721,941
2,863,632
1,463,612
3,711,205
2,927,507
3,327,585
2,292,974
2,317,009
2,293,703
2,969,077
2,413,799
3,382,604

50
59
53
50
53
59
62
54
65



1,460
1,387
1,445
1,443
1,428
1,162
1,274
1,145
1,,368



3,111,700
3,389,360
2,826,670
4,983,256
4,631,880
3,741,496
3,780,699
3,718,283
3,979,077
4,549,556
5,032,299
7,269,567
各年『函館市統計書』より
注)1 金属工業・機械器具工業の内容は表2−80・2−81に分類の通り
  2 造船業は機械器具工業に含まれる。
  3 金属工業には大正14年に設立した日本製缶が含まれている。
表2−80 機械器具工業の規模と生産額(昭和5年)
種別
工場
職工
生産額
生産比率
備考

蒸気缶製造業
内燃機関製造業
電気機械器具製造業
農業用機械器具製造業
工作機械器具製造業
食品加工機械器具製造業
起重機製造業
鉄道・軌道車両製造業
鉄製船舶製造業
その他の船舶製造業
船具製造業
その他の機械器具製造業

4
4
1
1
3
1
1
1
1
23
1
12

82
39
7
15
116
*1,103
15
*242
596
258
6
149

189,552
78,745
9,500
72,900
593,557
151,985
30,000
175,600
1,317,080
1,647,655
35,070
330,236

4.1
1.7
0.2
1.6
12.8
3.3
0.6
3.8
28.4
35.6
0.8
7.1





有江,山口鉄工所,木田製鋸所
日魯鉄工所
関商会
函館水電(株)車両工場
函館船渠(株)
造船業(木造船)

合計
53
1,428
4,631,880
100.0
 
昭和5年『函館市統計書』より
注)職工は、*1に女性9、*2に女性2が含まれている他は、すべて男性である。
表2−81 金属工業の規模と生産額(昭和5年)
種別
工場
職工数
生産額
生産比率
銑鉄鋳物業
鋼鋳物業
その他金属鋳物業
ブリキ缶類製造業
その他板金製品製造業
建築用家具用金物製造業
建具及び家具類製造業
5
1
2
2
4
11
1
56
6
10
116
25
59
16



30


56
6
10
146
25
59
16
84,989
18,411
28,150
2,601,695
48,270
120,880
25,112
2.9
0.6
0.9
89.0
1.6
4.2
0.8
合計
26
288
30
318
2,927,507
100.0
昭和5年『函館市統計書』より
注)1 ブリキ缶類製造業は日本製缶(株)が主である。
  2 建具及び家具類製造業は建築用鉄扉、鉄製サッシ製造の北立建材工業所である。
  3 その他板金製品製造業、建築用家具用金物製造業には鍛冶業が多い。
表2−82 道内主要都市の金属工業・機械器具製造業の比較(昭和6年)
                         ( )は職工数
 
函館
札幌
小樽
旭川
室蘭
工場数
生産額
工場数
生産額
工場数
生産額
工場数
生産額
工場数
生産額
金属建築家具材料
鋳造業
その他金属工業
機械器具製造業
11(72)
8(62)
6(86)
34(417)
319,136
316,940
1,691,509
1,433,120

7(75)
2(24)
37(393)

58,429
13,050
571,761
8(29)


24(293)
33,490


456,822
6(14)

46(127)
42(151)
43,881

147,423
376,303

3(15)
4(55)
*1(1,668)

7,764
47,718
*3,730,073
昭和6年『北海道都市統計要覧』より
注)1 機械器具製造業には造船業(函館船渠、木造船所)を含まず。
  2 *印は日本製鋼所室蘭製作所1社の職工数と生産額である。
  3 その他の金属工業には空缶製造業を含む。
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