通説編第3巻 第5編 「大函館」その光と影 |
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第2章 20万都市への飛躍とその現実 第4節 戦間期の諸産業 3 主要企業の動向 函館船渠(株) |
次に前章でとりあげた主要企業のこの期における経営の推移を述べよう。
函館船渠(株) P449−P450
また、12年から格安な外国売船が続出して新造船の注文はなかった。しかしこの頃から陸上工事に力を注ぐ方針をとった。幸いに戦時中に拡張した工場の能力に余裕があって、陸上諸機械類の工事を引受けることが出来たのである。
また、この頃工場の新旧不揃いで作業能率が徹底しないので、工費節約、設備改善のために、日本勧業銀行から45万円の借入を行った。しかし、金解禁の実施、世界的不況の波及で海運界は沈衰悲惨をきわめ、船舶の新規注文はほとんど跡をたち、同業者は修繕船工事に集中した。これに加えて、昭和5年は北洋漁業は不振の結果(日魯漁業は4期連続無配)に終り、この影響も大きかった。ともかく、本業の修繕工事の不足は陸上工事の獲得で補う状態が続いたのである。 なお、昭和3年2月13日から3月5日にかけておこった労働争議について、2月19日付けの「函館新聞」に、「弊社労働争議に就て謹告」の一文が掲載されている。内容は増給、昇給、退職手当の増額についての回答であって、幾分か聞き入れられるものもあるが、出来ないものは遺憾ながら出来ないと答えたものである。そして、最後の所で函館船渠のおかれた経営上の問題点について、「人手にも材料にも不便な此土地柄で、弊社の限りある人手を以て格安工事を出来るだけ多くこなしつけて成績を挙げるためには、建物機械其他種々の設備を改善し、それから生ずる力と現在の工場従業者の能力とを合せてかせぎ出さねばなりません」と述べて、不況下における経営方針を明らかにしている。 |
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