通説編第3巻 第5編 「大函館」その光と影


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第2章 20万都市への飛躍とその現実
第2節 水電事業市営化問題
1 佐藤市長と水電問題

函館水電株式会社の創立

報償契約の締結

函館水電の合併問題

買収交渉への取り組み

仮契約締結と反対運動

市長買収案の終結

函館水電株式会社の創立   P251

 わが国最初の電灯会社である東京電灯会社の創立は、明治20(1887)年1月22日で、その後各地に電灯会社が続々と開業、北海道でも、まず札幌電灯舎が明治24年、小樽が28年に開業している。函館では、函館電灯所が29年1月15日に開業(資本金12万円、35キロワットの発電機2台、創業者園田実徳)、当時の函館区東川町(現東雲町)に火力発電所を設け営業を開始した。その後水力発電の開発技術が進み、39年10月に渡島水電株式会社が設立(資本金100万円、創立社長阿部興人)、翌40年2月に函館電灯所を買収して函館およびその近郊に電灯・電力の供給を開始した。さらに翌41年には大沼発電所が完成し8月から送電を開始している。出力は1000キロワットで、需用家数も函館電灯所時代の10倍程に増加した。
 渡島水電(株)は、供給地域の中心が函館ということから、水力発電による送電開始直後の41年12月、社名を「函館水電株式会社」(以下函館水電と略す)と改称した。続いて44年8月には函館馬車鉄道を合併、電気軌道事業にも乗り出し、大正2(1913)年6月には湯川線(東雲町と湯川終点間)に電車を走らせている。
 函館水電の経営は、42年から10パーセント株主配当を続けるなど安定の方向に向かっていた。また電気軌道事業にも手を広げたことを受けて、函館区は、45年1月、函館水電に対し、特別区税として電柱1本に付き金70銭の電柱税を新設した。新設理由は「下水道築造及新に小学校舎を建築し其他緊急事業多々あり」、歳出に膨張を来したため、これに当てるというものだった。この年の電柱税決算額が913円、翌大正2年が1036円と税収入は増加した。
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