通説編第3巻 第5編 「大函館」その光と影


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第3章 戦時体制下の函館
第1節 戦時体制下の行政
1 戦争協力体制

国民精神総動員運動

函館市防護団

「家庭防火群」の創設

国家総動員法

函館市の町会設置

常会の開設

町内会部落会に法的根拠

戦時体制下の市役所組織

戦時体制下の市役所組織   P1122

 戦争との関わりで、市役所の組織にも変遷がみられる。兵籍課は、昭和4年に教育課所管の兵事係と総務課所管の戸籍係とを合わせてできたものである。しかし、日中戦争に突入した同12年以降は、徴兵、召募、召集、徴発に関する係数を市の事務報告書に載せることが中止された。同14年4月1日には警防課が設けられ、警備係と防空係が業務を担当した。これについては先に述べたとおりである。翌15年3月18日には警防課と衛生課が合体して防衛課となった。また、防衛課と同時に調査課が設けられ、現住調査、物資調査(物資の不足と偏在を調整する配給統制の基礎資料を得るため生活必需品の1年間の所要見込額と前年消費実績調査)を担当することになる。ついで16年4月1日には、物資課(産業課調整係を分離して、物資の調整に関する企画及連絡統制を図り配給の円滑を期する)を設け、調査課(庶務係と7つの方面係とに改める…市内を7方面に分割)と社会課(救護、軍事援護、福利の3係とする)を整備し、庶務課町会係では「市役所回覧板」を設置(3月より市内新聞に掲載)し、17年6月には町会課とするが、12月には町会課、物資課をさらにそれぞれ市民課、経済課と改めている。
 昭和18年の市役所分課は、考査室、秘書課、庶務課、市民課、教育課、工務課、水道課、港湾課、経済課、防衛課、社会課、兵籍課、税務課、出納課、湯川出張所、交通局で、事務報告書から特徴的な戦時関係事項を抜き出してみると別表の通りである(表3−5)。
表3−5 主な戦時関係事項
課名
事項
庶務課
市債…防空施設費(18.5.27借入)164,000円
市民課
町会部落会の整備(事業委員の増置…健民、納税、貯蓄)、市常会町会長常会、 町会財務並事務の査察、錬成会並講習会、毎月常会資料発行並地元新聞に市役所回覧板掲出(16年3月から)、関係諸行事(国民皆働運動、「函館号」飛行機献納献金運動…目標額230,000円で達成額306,981円、玄米食講習会・興亜決戦大講演会等の各種行事等)、国民貯蓄総体実績…11月末までに8割の実績(目標額7,300万円)、国民貯蓄組合…現在額1,911万円で700万円余増加、公債消化…10月までに5割5分の実績(目標647万円)、貯蓄券発行(料理店、飲食店に対 して割り当てる…割当総額69,200円)、この貯蓄業務のため貯蓄係設置
教育課
青年学校の生徒数は防諜の為略、12月8日国幣中社函館八幡宮で大東亜戦争2周年報告祭
工務課
空襲罹災者収容用仮設住宅新築工事、大型焼夷弾実験用模擬家屋其他工事、市施設金属類特別回収工事
経済課
生活改善資料募集、金属類非常回収…北海道金属類非常回収工作隊函館市支部設置、企業整備…北海道中小商工業再編成協議会函館地方支部を北海道企業整備委員会函館地方支部と改称、水産指導…時局下大衆向蛋白質食糧たる鰈、ほっけ漁業積極的経営を指導、農林…離農防止、農作物増産などを協議、空閑地利用、畜産奨励、主要食糧の需給繰作(米、麦に雑穀、穀粉、馬鈴薯を包含し主 要食糧の綜合配給)、資材…燃料(石炭、薪炭配給統制)、統計(国家総力の統制運用のため統計は飛躍的重要性を持つに至り調査機関の訓練に努める)…農林水産業調査、会社統計、港湾資源、工業、商業、労務動態、青壮年国民登録、労働、重要工場、世帯及人口その他など
防衛課
大型焼夷弾の実験、警防団組織変更(7月15日特設消防署設置で警報団の常備消防をこれに移管)、防空警報の発令及解除、防空教育訓練、国民体力法に依る体力検査など
社会課
軍人扶助法による軍人援護、労務需給(国民勤労報告隊出動)、国民動員協議会、国民徴用援護強化運動、軍人援護精神昂揚運動、転廃業店舗住宅工場転活用協議会、国威宣揚武運長久祈願祭の執行、社会事業団体職員錬成会の開催、軍人遺族函館母子寮の建設、傷痍軍人健康診断など
兵籍課
兵事は徴兵、召集、海軍の部とも成績良好、雑の部で市民合同葬十九回執行、傷病将兵、戦病没軍人軍属遺骨通過の際はその都度昼夜間を問わず係員出動諸事斡旋、本市出身軍人軍属の戦病死、応徴士死亡の通報を受けると直ちに遺族弔問、恤兵慰問袋の蒐集数20,335個陸海軍に寄贈
税務課
町会部落会納税事業
出納課
愛市一銭献金…収入額23,635.58円、国防献金及恤兵金…収入額171,067.52円
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