通説編第4巻 第6編 戦後の函館の歩み


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第2章 高度経済成長期の函館
第7節 教育制度の整備と教職員の動向
4 函館市教育目標の設定と教育課程の編成

函館市教育目標の設定

教育課程の編成

教育課程の自主編成へ

現代の教育

函館市教育目標の設定   P557−P559

 昭和30(1955)年1月22日、函館市教育課程編成委員会が発足した。この委員会は、専門家のみによるものではなく、広く市民各層に委員を委嘱し、総勢300名から成る画期的なものであった。この委員会は、目標設定専門委員会と内容設定専門委員会の2つから成り、発足後2年1か月で、「函館市教育目標」を決定している(函館市教育委員会『函館市教育目標』)。
 「函館市教育目標」は、教育課程編成の一環として制定されたもので、函館市教育課程編成委員会規程ならびに同細則に拠ったものである。
 編成上、とくに留意した事項として、「衆知をあつめて民主的に編成することを基本態度とし、調査・研究・審議にあたっては合議と協力とによって進め特定な一、二の人に任せたり、またその人々の見解や研究をそのまま鵜のみに取り入れることなどは固く避けるように」したといわれている(前掲『函館市教育目標』)。広く市民の衆知を集め、市民としての理想的人間像を描き出そうとした試みで、教育上の民主主義の実践として注目されるところであり、後年の教育課程研究委員会の組織も、こうした全市民的な教育課程編成組織の延長線上に成り立ったものだといえよう。
 編成の手続きとしては、基礎資料についての研究、調査と課題の抽出をおこなっている。前者は、理論研究として、日本国憲法、教育基本法、学校教育法、学習指導要領一般編の研究、教育の原理や理論の研究、先進都市や県の教育目標、北海道学校教育目標の研究をおこなっている。
 理論研究に加えて、函館市是の研究、函館市の社会実態調査研究など、いわゆる具体的な調査研究を実施し、基礎資料を整えている。以上が基礎資料についての研究、調査である。
 このような実態調査等を基に、地域の課題と教育課題の抽出をおこなって、函館市の理想的市民像の設定の基礎作業を完了している。
 こうして、理想的市民像の6つの観点(開発・経済・生命保全・文化・統制・道徳)を立て、函館市教育目標の草案を設定している。草案は、第1次から数次にわたる案を経たうえに、教育目標設定専門委員会総会、目標内容設定専門委員会連絡協議会、教育課程編成委員会常任委員会、教育課程編成委員会総会などの審議を経て、「函館市教育目標」として決定をみている。「函館市教育目標」は、地域目標と種別目標から成り、地域目標は、6つの大項目と47の小項目から構成され、種別目標は、小学校目標、中学校目標、社会教育目標から成っている。
 ここには、地域目標を掲げ、各界・各層の市民の総意に基づく理想的市民像を見ることにしたい。
 一、資源を愛護し、すすんでこれを開発利用する市民
 二、勤労を愛好し、科学的に生産を高める市民
 三、生命の保全に努め、地域に適した健康生活を実践する市民
 四、郷土を愛し、広い視野から郷土文化を創造する市民
 五、政治や法律がわかり、公民としての活動をりっぱにする市民
 六、たがいに敬愛して民主的道徳を実践する市民
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