通説編第3巻 第5編 「大函館」その光と影


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第2章 20万都市への飛躍とその現実

第9節 労働運動の興隆と衰退
6 北洋漁業基地函館と漁夫問題

船員争議と函館港

蟹工船事件

北洋漁労組合の結成

船員争議と函館港   P1103−P1104

 北洋漁業基地函館は多くの漁夫が集まるとともに、船舶輸送の拠点でもあった。そのため、これらに絡む事件や争議が多数発生している。
 その1つとして、昭和3年の海員争議がある。同年5月7日、日本海員組合は大会を開催し、「最低賃金制確立要望の陳情書」を、日本船主協会と未加入の川崎汽船に提出し、待遇改善を求めた。この争議は船主協会と海員組合の間で行われた争議であるため、全国的規模の労働争議となった。交渉の場はともに本部を置く神戸で行われ、地方支部はその指令に沿って動いた。仲介役は海事協同会がなり、5月31日、日本海員組合の陳情書を原案とし、6月2日、船主協会側の対案を比較検討したが、交渉は決裂した。そのため6月6日、日本郵船など5社以外の社外船がストライキに突入した。北海道では函館、小樽、室蘭で6日に286隻、3555人が参加、函館では22隻が停船し、7日には35隻が停船した。函館港には北洋への出漁間近の漁船の他、貨客の輸送船も多く産業・生活面での経済的影響が心配された。
 しかし、8日、海事協同会仲裁人決議が裁定され、争議は短期間に終結し、9日、函館港に停船中の43隻は出航し、この間題は一応解決をみたが、北洋漁業の漁夫問題はこの時期における大きな社会問題の1つであった(『函館商工会議所月報』昭和3年7月号)。
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