通説編第3巻 第5編 「大函館」その光と影


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第2章 20万都市への飛躍とその現実

第7節 都市の生活と新しい文化

3 明治末から大正期の宗教界

近代函館の宗教構図

「自宗教」・「体制宗教」としての神社

「自宗教」・「体制宗教」としての仏教寺院

日蓮宗にみる宗教植民型布教と都市型布教

新宗教とは

天理教にみる「自宗教」としての「新宗教」

金光教にみる「自宗教」としての「新宗教」

邪宗から「異宗教」化するキリスト教

新宗教とは   P767−P768

 まず、初めに、「新宗教」について、概括的な整理をしておこう。「新宗教」の概念規定は一様ではないが、一般には幕末維新期から現代にかけて、既成の寺院仏教や神道と教義的に決別する形で誕生した運動体としての宗教の総称をいう(村上重良『新宗教』評論社)。
 その生成および発展の時期が、時代的にも19世紀から20世紀後半に及ぶため、「新宗教」は3段階に分類することが可能である。第1段階は幕末維新期、第2は昭和初期、第3は戦後期である。その数もかなり多いが、代表的なものを列挙すると、まず第1段階に発生したのは次の一群である。
(1)習合神道系としての黒住教・天理教・金光教、(2)富士・御嶽信仰系としての実行教・扶桑教・御嶽教、(3)復古神道系の神道修成派・大成教・神習教・神道本局・大社教・神宮教、(4)民衆神道系としての禊数・神理数という4系列・14派である。そのうち神宮教は神宮奉斎会に改組したため、残りの13派が通常、独立教派として「教派神道」13派と総称される。これら13派が近代の国家神道体制の一翼を担ったことは言うまでもない。この他、幕末維新期の新宗教として興起したのに、法華神道系の蓮門教と富士信仰系の丸山教(これはいずれも附属教会)および、法華系の本門仏立講がある。
 一方、昭和初期の恐慌と天皇制ファシズムの台頭期の第2段階に生成した新宗教には、金光教から派生した大本教、大本教から出た生長の家、天理教から分派した「ほんみち」、徳光教に出た「ひとのみち」(後のPL教団)などの習合神道系の諸教と、日蓮宗系の霊友会がある。この霊友会からは、のちに、孝道教団、立正佼成会、妙智会、仏所護念会、妙道会などが分立した。
 戦後に発展をとげた第3段階の新宗教として、大本教から派生した習合神道系の世界救世教、日蓮宗系から出た創価学会などがある。
 このように、幕末維新期から戦後に至るまでの間に、踵を接するが如く、数多の新宗教が誕生したのであるが、系譜的にみれば、習合神道系と日蓮宗系にその大半が出自することが特色であろう。これら新宗教は、神社神道を一元的に再編成して皇室神道と直結することで成立した近代国家神道との間に、さまざまな宗教的交渉をもつことになるが、新宗教は新宗教としての思想的特性(例えば、救済の約束、呪術と奇蹟、神霊の実在、シャーマニズムなど)を発揮した。しかし新宗教がそれぞれに根ざしていた民衆的なものも、国家神道の前にはその教義自体も改変を余儀なくされ、概ね戦時下にあっては、国家神道の補完の宗教運動体として位置付けられることが多かった。
 こうした多種の新宗教の中で、函館の信仰世界に多大な足跡を残したのに、まず天理教と金光教が挙げられる。
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