通説編第3巻 第5編 「大函館」その光と影


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第2章 20万都市への飛躍とその現実

第3節 函館要塞と津軽要塞
2 津軽要塞の設置

日露戦争後の要塞整理

津軽要塞の建設

津軽要塞の設置

津軽要塞の建設   P283−P285

 参謀本部は、この「再整理要領」の裁可を経て、同12年3月「朝鮮海峡要塞系建設要領書」および「津軽要塞建設要領書」を作成、要塞建設実行委員会の審議に委ねることになった。
 次に「津軽要塞建設要領書」の概要を紹介しておこう。この要領は、全6章および付表3、付図2から成っている。

  第一章 要塞設置ノ目的
本土ト北海道トノ連絡ヲ確実ニシ且朝鮮海峡要塞系ト相俟チテ敵艦ノ行動ヲ制限ス
  第二章 整理ノ要旨
前章ノ目的ヲ達スル為メ津軽要塞ヲ新設シ在来ノ函館要塞ハ函館港直接防衛ノ為メ所要ノ砲台ヲ存置シ之ヲ津軽要塞ニ編入ス
  第三章 要塞ノ任務
一、津軽海峡東西両口ニ於ケル敵艦ノ航通ヲ防遏ス
二、敵ノ攻撃ニ対シ函館港、大湊要港及陸奥海湾ヲ掩護ス

 第4章「永久防禦設備」では、前章の目的達成のために新設すべき砲台として、(1)大間崎第1、第2砲台、(2)汐首崎第1砲台、(3)龍飛岬砲台、(4)尻屋崎砲台、が挙げられている。この内、(1)と(2)は、共に「津軽海峡東口ニ対スル敵艦ノ動作ヲ妨害シ且其航通ヲ防遏ス」るために、また(3)は、同じく海峡西口に対する敵艦の行動を、そして(4)は、大湊要港に対する敵艦の行動を阻止するためであった。
 これらの各砲台に配備する火砲と弾薬は、表2−12のようになっていた。すなわち、青森側の龍飛岬と大間崎第1、尻屋岬に45口径30センチカノン砲計6門、また、汐首崎第1と大間崎第2には、7年式30センチ長榴弾砲計8門がそれぞれ配備される予定であった。要塞の補助建築物としては、弾薬本庫が函館に、火薬支庫が龍飛岬、大間崎、尻屋崎に設けられ、龍飛岬他4か所には1メートル50センチから2メートルの探照燈も置かれることになっていた(『津軽要塞築城史』)。
 要塞建設実行委員会の審議を経た大正12年12月、陸軍大臣は津軽要塞と朝鮮海峡系要塞の建設を築城部本部に命じた。同本部は、すでに11年8月、函館に築城部本部の臨時派出所を開設していたが、翌12年4月にこれを廃止、築城部津軽支部を設置した。
 このようにして、大正13年9月、大間崎第1砲台の建築に着手したが(昭和4年9月、竣工)、これが津軽要塞としては最初の工事であった。
表2−12 整理前後の津軽要塞の備砲と備付弾薬数
砲台\区分
整理前
整理後の備砲
整理後に於ける
備付弾薬数
摘要
龍飛岬  
45口径30加 2
200
新設
汐首崎第一  
7年式30榴長 4
200
大間崎 第1  
45口径30加 2
200
第2  
7年式30榴長 4
200
尻屋崎  
45口径30加 2
200
薬師山
15臼 4
 
 
廃止
御殿山第一
28榴 6
千畳敷
28榴 6
同上
180
そのまま現存
25臼 4
 
 
新設又は利用
谷地頭南方
9加 4
予備  
45式15加 12
600
野砲 △8
18
同上 △6
12
600
山砲 24
同上
600
 
12榴 12
600
15臼 4
同上 12
280
9臼 4
同上 8
280
 
高射砲 10
600
機関砲 18
同上 32
10,000
 
高射機関銃 10
10,000
備考 1.弾薬は1門(銃)のものを示す。
2.△印野砲は臨時高射野砲を示す。
『津軽要塞築城史』(現代本邦築城史 第2部第8巻)より作成
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