通説編第3巻 第5編 「大函館」その光と影


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第2章 20万都市への飛躍とその現実
第2節 水電事業市営化問題
4 斉藤市長と水電問題

市長の交代

和解へ

和解条件と契約内容

和解へ   P274−P275

 7月6日、訴訟の和解勧告がなされ、和解準備公判を9月9日に開廷することとなった。和解準備公判では、函館市も、帝国電力も和解の意志があることを表明、ようやく新展開となった。また市会議員の改選により新メンバーとなった電気委員会も、買収を目的に和解交渉を進めることを決定した。
 翌14年5月8日、東京民事裁判所に両者和解案を持ち寄ったが折り合いがつかず、裁判長の調停案待ちとなった。6月21日提示された調停案の概要は、会社は「一時金として金三〇万円を和解効力発生と同時に拠出すること」、「本契約の効力発生したる日より一か年に付一〇万円を納付すること」、「速やかに夜間電力料金を現在料金より低額とすること」などだった。この裁判長調停案が出ると、あくまでも判決を得て市民の権利獲得をと主張してきた人々は、「函館市民権益擁護同盟会」を組織して市民大会を開催、屈辱的和解は排撃との決議を行った。しかし市の電気委員会は、7月21日、裁判長案を若干修正して同意することに決し、同月25日の市会に、対帝国電力株式会社訴訟事件和解に関する件が上程され、8月1日、賛成25、反対11で和解案は通過した。函館市が修正した事項は、料金改定はあくまでも両者協議で決定すること、本店の函館市への移転を要求したこと、和解要項で決めたこと以外はいわゆる報償契約の趣旨で仮契約を結ぶことなどであった。
 8月10日、東京民事地方裁判所で和解公判が開廷され、覚書と契約書に調印がなされた。市会はこれを23対9で承認、帝国電力も株主総会で満場一致で承認し、9月7日、裁判所で和解が成立した。
 大正14年、佐藤市長の代に電気事業の買収、市営化に乗り出した函館市は、その後坂本市長、斉藤市長と3代の市長にわたり市を挙げてこの問題に取り組むこととなった。昭和6年の契約満了後は、買収問題と電灯動力料値下げとが錯綜し、こじれにこじれた水電問題だったが、ようやくここに和解をみ、再び報償契約を締結することとなったのである。新聞は「函館市″市政の癌″帝電問題解決す」(9月8日付「函新」)と報じた。

和解成立を伝える新聞(昭和14年9月8日付「函新」)
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