通説編第4巻 第6編 戦後の函館の歩み


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第2章 高度経済成長期の函館
第3節 函館の産業経済の変貌
5 高度経済成長期における函館工業界の実情

造船・北洋関連産業の不振

失業多発地帯という環境

海運市況の復興と造船ブーム

水産食品工業の伸展

臨海工業地帯の造成

公害問題と企業の対応

北洋関連企業の消長

転換期を迎えた工業界

函館を支える食料品製造業

落ち込む輸送機械工業

一般機械工業の動向

工業構造の転換による明暗

工業構造の転換による明暗    P465−P466

 オイルショックで、大きな打撃を受けたアジア石油と、業績を維持した日本セメント上磯工場、それに対してそのまっただ中に函館市に隣接する七飯町に進出した、いわゆる先端産業の日立北海セミコンダクタ株式会社の状況をみておきたい。
 函館圏総合開発基本計画の中心企業であったアジア石油は石油価格の高騰による需要減少に備えて、昭和52年には日産能力が1万バーレルの2号基を停止した。それでも53年の精製量は70万9000キロリットル、54、55年と50万キロリットル台の精製量を維持した。しかし、昭和56年に大口需要先である日本セメント上磯工場が重油から石炭混焼に転換したため、精製量は10万キロリットル以下となった。国内で50数か所ある製油所では下から2番目の小規模工場ではあったが、56年に10億円を投じて、七重浜沖合2キロメートルまで埋設してあったパイプラインを取り替えて、高粘度原油の処理を可能にした。また昭和58年から運転開始の知内火力発電所への重油供給に期待したが、通産省の過剰精製設備処理の方針があり、2号基の廃棄処分、さらに1号基の5000バーレル能力削減が実施され、ついに59年には精製部門は休止となった。残存した1万バーレルの設備による生産量では、コスト的に関東地区から製品を輸送した方が有利と判断されたのである。こうして、同工場はアスファルトの生産と新函館都市ガス(昭和61年に北海道ガス株式会社函館支社となる)へ供給する都市ガス原料の製造のみとなったが、原油タンクに余裕があったため油槽所および石油備蓄業務へと移行した。そのため昭和48年には215人であった従業員も59年に67人に減少し、規模の縮小は否めなかった(『上磯町史』下巻、アジア石油株式会社提供資料による)。
 昭和50年代のセメント業界は、不況カルテルの結成もあって概して不振であった。日本セメント上磯工場の50年代の生産量は200万トン台を維持、63年には240万トンであった。54年には省エネルギーのため、6号窯をニューサスペンションプレヒーター付回転窯に改造している。従業員は50年の351人から次第に減少して、63年には、205人、鉱山も49人となり、合理化が進展している。58年には中近東への輸出があった。62年には、海上桟橋を2キロメートルに延長して、6万トンクラスの着船が可能となって、製品や原料、燃料の大半がここから搬入、搬出されている(『日本セメント百年史』、太平洋セメント株式会社提供資料による)。
 一方、日立北海セミコンダクタは、その前身を日立釜屋電子といって、昭和45年に神奈川県綾瀬町で操業を開始しており(相模工場)、48年に七飯町へ進出した。七飯工場は50年に同社の奈井江工場を吸収し、52年には七飯工場を本社として社名を日函電子と替えた。七飯町の豊富な水と七飯、函館の労働力が立地の大きな誘因であった。日立製作所が全額出資の会社である。57年に社名をさらに日立北海セミコンダクタと改めた。昭和59年度の生産額は過去最高に達しているが、七飯工場は親会社から空輸された半製品(ウエハ)を完成品にして検査後、再び親会社へ陸路出荷する後工程を担当しており、従業員は150人から最盛時には600人であった。資本金は2億円から6億円となり、再三にわたり工場の拡張をしている。米国への輸出、国内需要ともに旺盛で、季節工の採用や3交替制のフル操業で、生産即出荷の状況であった。しかし、昭和60年春頃からの日米半導体摩擦の激化で生産を抑制した。通産省の減産指導に沿って、月間2日程度の平日休業、季節工の再雇用停止、設備投資計画の削減がなされたが、62年後半には需要好調となり、増産体制をとり、63年には能力増強投資をして、目一杯の操業を継続している。出荷額をみると、57年度から函館ドックを上回って、函館地域の首位を占めた(日立北海セミコンダクタ株式会社提供資料による)。
 なお函館市が昭和59年に国の承認を受けた「テクノポリス函館」構想(353頁参照)を支援する北海道立工業技術センターは、61年に完成、63年には臨海工業団地の分譲が始まり、「水晶振動子」生産のトップメーカーが立地して翌年から操業を開始した(平成元年『函館市勢要覧』)。
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