通説編第4巻 第6編 戦後の函館の歩み


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第2章 高度経済成長期の函館
第3節 函館の産業経済の変貌
3 イカ珍味の加工産地への転換とその特産地形成

スルメから珍味の時代へ

イカ乾燥珍味加工業の沿革

産地間競争と特産地の確立

加工業者の二極化と再編成

市場・流通の変化と販売対応

労働力条件の変質と労働集約型産業の限界

今後の方向性−経営の二極化と地場勢力の後退−

濡れ珍味加工業の沿革

加工業者の多様さと指導的企業

加工の技術革新と新製品開発

需要と市場対応

持続的成長の課題

今後の方向性−経営の二極化と地場勢力の後退−   P413

 函館のイカ乾燥珍味製造業は今後とも大手問屋系企業における本格操業などにより総体として高水準な生産態勢を確保していくものと予想されるが、内部的には構造変動や条件変化が続いていくものと思われる。それは、まず企業間・階層間における経営の二極化傾向とそれに伴う企業間格差の一層の進行が予想される。具体的には中小上層の一部や大手問屋系列および提携関係の企業では引き続いて成長型の経営展開がはかられていくのに対して中小下層の企業や地元大手層の企業の一部では依然苦しい経営展開が続いていくものと思われる。とくに中小下層においては後継者の確保や販売・原料・労働力などの条件変化に対する対応力の側面から事業の縮小や転・廃業といった事態も相当出てくるものと考えられ、その結果として乾燥珍味関係の企業数はさらに整理されていくものと予想される。次に、函館における消費地問屋勢力の優位性の確立とそれに伴う既存の地場加工勢力の後退である。それによって当地加工業の生産シェアにおける消費地問屋系企業のシェアは上伸してその中心を占めていくのに対し既存の地場企業のシェアは後退してじり貧傾向をたどり、加えて大手問屋層による地場企業の系列・グループ化の促進によりその産地掌握がさらに強められていくものと思われる。その結果として函館の加工業形成の担い手であった地場加工勢力はその主役の座を消費地流通勢力に明け渡していくことになることも充分考えられる。
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