通説編第3巻 第5編 「大函館」その光と影


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第3章 戦時体制下の函館
第5節 戦時下の諸相
3  強制連行と捕虜問題

3 中国人の強制連行

戦時体制と労働力

外地労働者移入組合

中国人労働者の処遇案

職業紹介法の制定

閣議決定と試験的移入

函館の事業場

(株)地崎組の中国人使役

(株)地崎組函館出張所の場合

函館華工管理事務所の場合

中国人労働者の生活

中国人の帰還

外地労働者移入組合   P1252−P1254

 また、日本内地、例えば北海道への中国人苦力の移入問題も、昭和14年の段階で早くもそのような動きをみることができる。すなわち同14年8月、北海道土木建築業連合会内に設けられた外地労働者移入組合の発起人代表地崎宇三郎は、「支那人労働者」の移入に関して厚生・内務両大臣らに次のような陳情を行っている

      願書
現下北海道ノ産業ハ生産拡充ノ国策ニ基キ其後発達著シク拡張日ニ次ギ之ガ根幹ヲナス、土木建築工事ノ施行セラルゝモノ北海道開拓以来ノ記録ヲナシ、従而平年ニ於テ恒ニ不足ヲ感シツゝアル労働者ノ需給ハ頗ル円滑ヲ欠キ為ニ国運ノ進展ニ重大ナル関聯ヲ有スル事業ノ成否ニ影響スル処多ク、吾々其業ニアル者日夜痛歎是ガ応急手配ニ奔走シ居ルモ如何セン、全国的ナル労働力不足ハ姑息ナル方法ニテハ到底打開シ難キヲ察シ茲ニ支那本土ヨリ労働者ヲ移入シ、此問題ヲ根本的ニ解決スルノ外無シト思考仕リ茲ニ其具体的方法並ニ理由ヲ開陳致候
      理由
一、我国ハ今回ノ支那事変ニ際シ貴重ナル我忠勇ノ将兵ト莫大ナル資材及ビ学識経験アル士ヲ送リ一億支那ノ健全ナル発達ニ寄与セントシ、国ノ内外困苦ヲ忍ビ相一致シ此目的達成ニ努力シツゝアリ、此代価ト云ハンヨリ根本的ナル日支親善ノ方策トシテ、暴□セラレツゝアル支那ノ原始的物産ノ移入ヲ計ル可キハ勿論、最モ低廉ナル人的資源ノ移入ヲ計ルハ最モ肝要ナル方策ナリ、千金ニモ代ヘ難キ我等ノ同胞ハ大命ノ下ニ故国ノ産業戦線ヨリ各自ノ持ツ重要ナル職責スラ放棄シ東洋永遠ノ平和ノ確立ノタメニ遠ク満蒙ノ擴野ニ酷暑極寒ヲ嫌ハス奉公ノ誠ヲ致ス、自然我国内ノ労働力ハ減ゼザルヲ得ズ、其枯渇セル我労働資源ヲ支那人ノ有スル最モ簡易ナル奉仕ヲ以テ代位スルハ極メテ当然ナラズヤ、吾等ハ想フ、彼等ノ如キ低廉ナル労働賃金ヲ以テ甘ンズル労働者ヲ我本土ニ連行シ、我国内ノ発展力ヲ示シ之ニ相当ナル労銀ヲ支払ヒ之ヲ貯ヘシメ一定期限ニ之ヲ本国ニ送還セシカ、彼等ハ声ヲ大ニシテ我日本ノ実力ヲ謳歌シ豫テヨリ試ミラレツゝアル、百ノ宣撫工作ヨリ勝レルモノアル可シト信ズ
二、南鮮方面ヨリ労働者ヲ移入セントノ説アルモ吾々業者多年ノ経験ヨリ看レバ彼等ノ多クハ直チニ附和雷同シ騒擾ヲ惹起セシメ或ハ賃金値上ヲ計リ又ハ怠惰ニシテ賭博ヲ好ミ、所定ノ労働ニ服サズ、徒ラニ欠勤シ其工事工程ニ支障ヲ来サシムル事、使役上ノ困難ハ勿論、地方風俗ニ及ボス影響甚大ニシテ其弊害言語ニ絶セリ、之ニ比較シ支那労働者ハ一時的ノ移入ナレバ其行動ニ拘束ヲ加フル事モ得ベク賃金ノ支払ヒヲ正確ニシ或種ノ奨励方法ヲ用フルトキハ唯々トシテ稼働シ問題ヲ惹起スルノ憂ヒナシ
三、中央政府ノ指導方針ノ一トシテ低物価策ヲ高唱セラルゝ秋ニ当リ労働者ノ不足ヨリ生ズル賃金ノ高騰ヲ防グニハ低賃金ニ甘ンズル労働者ノ一時的移入ヲナス外ナキハ論ヲ俟タズ、此見地ヨリシテモ支那人ニ優スルモノナシ
以上ヲ概説スルガ如キ理由ニ依リ支那労働者ノ移入ハ緊急ニシテ最モ適切ナルモノト存候間特別ノ御詮議ニヨリ旧慣ヲ破り御許可成下度別ニ募集ニ関スル処遇案等相添ヘ及陳情候也
    昭和十四年 月 日
                    札幌市北四條西三丁目一番地
                                 (国立国会図書館所蔵、GHQ/SCAP文書)

 この「願書」にも明らかなように、北海道土木建築業連合会の認識としては、折からその準備が進められつつあった朝鮮人労働者の移入には消極的姿勢をみせており、むしろ「支那労働者」の「一時的ノ移入」の方が問題は少ない、との立場であった。
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