通説編第3巻 第5編 「大函館」その光と影


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第3章 戦時体制下の函館
第2節 戦時体制下の産業・経済
1 経済統制下の函館経済
1 戦時下の商業機関

商工会議所の改組問題

北海道内の実情

商工経済会の設立事情

北海道の商工経済会

定款と組織

道商工経済会函館支部

道商工経済会の廃止

北海道内の実情   P1128−P1129

 だが、太平洋戦争の開戦による経済統制の強化は、このような地域商工団体の組織的再編成を不可避のものとした。昭和17年11月、商工省が「経済会議所設立要綱」を呈示するに及んで、北海道商工会議所連合会は旭川で代表者会議を開き、北海道側の意見を日本商工会議所に答申した(『札幌商工会議所八十年史』昭和63年)。そして、同年12月11日の第42回通常北海道会において、佐藤弥十郎議員と坂千秋北海道庁長官との間で次のような質疑応答が行なわれている。

 伊藤議員、(前略)最後ニモ一ツ御伺ヒ致シマスコトハ、ソレハ商工会議所ノ機構改正ニ関スル問題デアリマスガ、商工会議所ノ機構改正問題ハ、茲数年前カラ持越サレテ来マシタトコロノ懸案デアリマシテ、殆ド毎議会毎ニ問題トサレテ来タノデアリマスガ、今回商工省当局ハ国家総力戦ノ現段階ニ即応シタ新構想ノ下ニ、現行商工会議所ヲ改正シテ、新シイ性格ノ経済団体デアル経済会議所ヲ設立スルコトニ決定致シマシテ、之ヲ来ルベキ議会ニ提出スルヤウデアリマスガ、是ハ産業相互間ノ連絡調整ヲ図リ国民経済ノ総力ヲ発揮セシムル為ニ、利益擁護機関的性格ヲ持ツ商工会議所ヲ改組シ∃ウト云フ狙ヒカラ正ニ当然ノコトデアルト思ヒマス、私ノ御尋ネシタイト思フノハ之ニ関連スル問題デアリマスルガ、本道ニハ北海道庁令ニ依ル百ニ近イ町村ニ商工会ガ設立サレマシテ、従来商工業者ヲ対象トシテ其ノ改善発展ヲ図ツテ幾多ノ功績ヲ残シテ来タノデアリマスガ、其ノ後商業組合、工業組合ノ出現ニ依リマシテ幾分其ノ活動範囲ガ狭メラレテ参リマシタガ、ソレデモ尚工業者竝ニ各種組合ノ町村内ニ於ケル横ノ連絡機関トシテ相当ノ役割ヲ致シテ居ルノデアリマス、現ニ昨年(昭和16年のこと−引用者)ノ7月経済部長ノ通牒ヲ以テ事変下其ノ重要活動方針ヲ示サレ之ニ従ツテ更ニ一段ノ努力ヲ続ケテ来タノデアリマスガ、時局ハ益々経済団体ノ新シイ性格ト機能ヲ要求シテ居ルノデアリマス、茲ニ商工会議所ノ改正法律ノ提出ヲ見タノデアリマスガ、従ツテ町村商工会モ当然国家経済政策ニ順応シテ何等カノ脱皮ヲ必要トスルコトハ明カデアリマスガ、之ニ対スル道庁当局ノ御方針ヲ伺フコトガ出来レバ甚ダ幸ト存ズル次第デアリマス(下略)。
 長官坂千秋君、(前略)ソレカラ商工会議所ノ機構ノ改正ガ、今回ノ議会ニ改正法律案ガ出ルラシイノデアリマスガ、新聞ニモ出テ居リマスシ、サウ云フヤウナコトモ聞イテ居リマス、唯経済会議所ト言フノデナクシテ、矢張リ商工会議所ノ改正法律案ト云フコトニナルヤウニ聞イテ居ルノデアリマスガ、之ニ関連致シマシテ商工会ノ問窺モ起ルノデアリマスガ、之ニ付キマシテハマダ正式ニ何等政府ノ方カラ指示ヲ受ケテハ居リマセヌ、何レ此ノ改正法律案ガ通過致シマスルト、全ク御意見ノ通リニ同ジ性質ノモノデアリ、其ノ性質ノ延長、其ノ精神ノ延長、拡張ト云フコトニナル訳デアリマスカラ、何レ何等カノ国家的方針モ決ルデアリマセウシ、北海道ノ特殊事情ニ応ジマシテ、相当ノ考慮ガ廻サレナケレバナラヌコトデアリマス、其ノ点ハアレ是抜カリナク善処シタイ、斯様ニ考ヘテ居ル次第デアリマス。(拍手)
            (『昭和十七年北海道会速記録』、「第四十二回通常会会議事速記録」第4号)

 伊藤議員の質問自体は、商工会議所の機構改正問題に関係して、道内の「百ニ近イ町村」の商工会に対する道庁当局の取扱方針を問うものであったが、それは、結局商工会議所の機能をどのように改めるか、という問題に関係していた。坂長官の答弁は、そのことを端的に示しているといえよう。
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