通説編第3巻 第5編 「大函館」その光と影


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第2章 20万都市への飛躍とその現実

第7節 都市の生活と新しい文化

2 大火と都市形成

大火と都市景観

明治40年の大火概況

大火後の復旧事業

火災予防組合の設置

火防設備期成同盟会の建議

火防調査委員会の建議

大正10年の大火概況

火防設備実行会と防火線

火防の進展と都市計画

昭和9年の大火概況

昭和9年の大火の惨状

防火建築の検証

大火後の復興事業

大火史から見た地域課題

慰霊祭と慰霊堂

火防調査委員会の建議   P722−P723

 さて、もうひとつの火防調査機関が大正4年1月28日に商業会議所内に設置されることになった。それは、当日の商業会議所総会において甲野荘平より「近年頻発する大火は函館の繁栄を阻害するもの頗る甚大にて之れに因る直接物質上の損害は固より間接に蒙る損失に至りては實に測り知るべらざるものあり」(大正4年1月29日付「函新」)との理由から火防調査委員会設置の建議が提起され満場一致で可決されたことによる。火防調査委員会の決議事項を要約すれば、一.火災予防に関する件(個人の注意警戒の件、団体的注意警戒の件、法令を以て火災原因物を制限するの件)、一.火災延焼予防に関する件(屋上制限令励行建議の件、建築規則制定建議の件、防火壁建造の件)、一.火災消防に関する件(消防組員救済の件、火災報知機試設の件、義勇消防隊設置の件)、一.水利に関する件(上水道拡張の件、電気喞筒設置の件、谷地頭に水門新設の件)などは、火防設備期成同盟会の建議案の延長上にありながらより詳細に調査していることがうかがえる(大正4年7月21日〜25日付「函新」)。この建議案は区会で大正5年度にガソリンポンプ2台の購入を決議していること(「大正四年区会決議書綴」)、や「消防組員及共遺族を救済し且同組合の消防上勤労ある者を表彰する」(大正4年12年2日付「函新」)ことを目的とする函館消防義会の設立に影響したと思われる。
 とくに、この建議で注目したいのは一.土地家屋賃借に関する件と、一.建築会社を設立の件についてである。この2件はそれぞれ耐火建築に関連した事項と考えられる。つまり、函館に耐火建物を建てるには「當区従来の習慣として土地の賃貸期間短期にして永久的の耐火建築をなす場合に於て一大障害たるを認むるが故に、区長は地主会を開催して旧慣を打破し、地上権の設定又は長期賃貸借をなさしむる事」という土地の賃貸関係の課題の克服と、「本区大火原因は主として可燃質建築なるにあるが故に、漸次耐火的又は准耐火的建築に改良するを要するも現下の区の経済状態にては容易の業にあらざるを以て株式組織の一大建築会社を設立し、之を経営するが如きものあらば、その目的を遂行すること難きにあらざるべきを信じ同会社の設立を希望するものなり」(大正4年7月25日付「函新」)という耐火建築の民間会社による事業の推進が必要とされたのである。

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