通説編第3巻 第5編 「大函館」その光と影


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第2章 20万都市への飛躍とその現実

第6節 民衆に浸透する教育

1 大正デモクラシーと教育

4 実業教育

実業教育の改革

庁立函館商業学校の教育

庁立函館商業補習学校

函館工業学校の設立と庁立移管

区立函館工業補習学校

函館中等夜学校の設立

函館女子中等学校の設置

函館中等夜学校の設立   P665−P666

 大正期には、昼間勤労に従事する青年男子に須要な高等普通教育を授けることを目的とする学校が道内の主要都市に設立されるようになった。戦後の学校制度改革によって登場する定時制課程の先駆をなすものといえる。函館では函館中等夜学校が、大正12年6月1日設立認可されている。私立学校令第2条により道庁長官の認可を経たもので、道庁の「中等夜学校準則」によって設置されたものである。
 「中等夜学校準則」によれば、中等夜学校というのは「小学校ノ教科ヲ終ヘ更ニ中等程度ノ学科ヲ修メントスル者ニシテ昼間職務ノ為入学シ能ハザル者ノタメ特ニ夜間ヲ利用シ男子ニ須要ナル高等普通教育ヲ授クルヲ以テ目的トスル」(第1条)もので、修業年限は4年と規定されているが、実際には「土地ノ事情ニ応ジ学校長ハ随意ニ之ヲ変更スルコトヲ得」るとする「付則」の規定により、それぞれの学校が2年ないし4年の範囲で決定している。学科目は修身、国語漢文、英語、地理歴史、数学、理科、図画とされ、毎週教授時数は各学年とも20とされている。授業料は1か月2円。学校設立者は庁立中学校長、校舎は庁立学校校舎の一部を充てるものである。
 国立公文書館が所蔵する文部省関係の文書(「自大正十三年六月至昭和二十二年八月各種学校設置廃止」第1冊)の中には、道庁長官が私立学校令第2条によって設置認可した中等夜学校に関する報告が収められているが、それによれば、函館中等夜学校は設立者小田四十一、位置は函館市大字亀田字湯ノ川通函館中学校内、修業年限は本科3年とある。学科目は修身、国語漢文、外国語、地理歴史、数学、博物、物理化学、図画の8学科で、毎週教授時数24時間である。準則に比べて修業年限が1年短縮され、学科目が2学科増設され、毎週教授時数が4時間増えている。同校は、以後勤労青年男子の高等普通教育の機関として活用されるとともに、市内の中学校の不足を補うものとなっていくのである。
 なお同種の学校として、札幌(修業年限4年)、旭川(普通科2年、高等科2年)、室蘭(3年)、名寄(3年)、釧路商業(3年)などの諸学校が、大正12年2月以降5月までに道庁長官から設立認可されている。
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