通説編第3巻 第5編 「大函館」その光と影


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第2章 20万都市への飛躍とその現実
第2節 水電事業市営化問題
2 坂本市長時代の水電問題

新たなる展開

買収交渉開始

市民運動の展開

鶴本徳太郎の指針

水電会社断線を強行

鶴本徳太郎の指針   P265−P266

 この間、社会大衆党の鶴本徳太郎が「電力統制と市民大衆」(「函毎」に5月2日から3回連載)と題して、日本の電気事業の草創から現在を整理しさらに北海道の実情を分析、自分たちが進むべき指針を提示している。指針の概要は次のとおりである。
 電気事業は事業それ自体の性質と極端なる国家の保護によって成長発展したものであり、この保護育成は利潤の追及のみを経営の目的とする資本家の楯となり鉾となったが、同時に需用消費者側にとっては生活上の桎梏となった。
 日本の5大電力会社といわれる東京電灯、東邦電力、大同電力、日本電力、宇治川電気は、今日合わせて20億円の資本力を擁し、しかも九州水力を包括することによって北海道を除く全国の配電網はことごとくこの6社系の諸会社によって支配されている。しかもこの6電力会社は三井、三菱、安田、住友、大倉、川崎、渋沢などの日本に於ける代表的財閥の率いる虜となっていることは周知の事実である。
 北海道における電気事業会社は現在30余社を数えるが、その多くは供給会社であって、北海電灯、北海水力、函館水電の直系傍系の会社に過ぎず、全道における絶対支配的なる水利権および供給権を有して本道200万の需用家に君臨するのはこの3社以外にはないのである。北海電灯は富士製紙の傍系社として、北海水力は王子製紙の傍会社として、また函館水電会社は函館における地方財閥によって創立され、のち藤山雷太、鳩山一郎を社内代表として政党がその内部に支配権を確立するに及んで、渡島半島地方に於ける小電力事業会社を併合し今日の基礎を築き上げた。本道電力事業はその持ち株の数より見て三井財閥の支配下にあり、各社の金融関係から見れば、住友、安田のヘグモニイの下にあることは明瞭である。
 経済上の「統制」とは「独占」の同義語であり、諸君は既に「行政上の統制」が何故に不可能であるかを知られたであろう。また如何にして「純経済上の統制=独占」が「行政上の統制」を不可能にしているかを知ったであろう。市長は行政上の統制を具現する−公益性保持の−立場から公益を主張する。しかもその具体的手段としては法律上の裁断に俟つ以外に方法はないであろう。そして我々は経済上の統制化=独占化を防衛払拭することによって消費者大衆の利益をまもり伸張しなければならない。その具体的手段として法律上の手続きを進めることは轍(わだち)に注ぐ油に過ぎず、轍を進むる原動力とは拡張された大衆の庄力以外の何物でもない。

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