通説編第3巻 第5編 「大函館」その光と影


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第1章 露両漁業基地の幕開け
第4節 明治末期函館の教育界
5 社会教育

壮丁教育および予備教育

「戊申詔書」の公布

図書館の設置

図書館の設置   P218−219

 明治32年11月公布の図書館令に基づいて、公私立の図書館の設置がすすめられていくが、日露戦争後設置数が急激に増大している。法令全書掲載の文部省告示目録によると、同39年には文部大臣により設立を認可された公立の図書館が8、文部大臣に設立を開申(届出)した私立の図書館が13となっている。次いで40年には、公立15、私立31と、急増していく。こうした傾向は同41年も続き、公立19、私立22の設置をみている。このような全国的な公私立図書館設置の動きの中で、明治42年には函館でも、図書館の設置をみることになる。「私立函館図書館ヲ北海道函館区青柳町ニ設置ノ件設立者ヨリ開申セリ」(文部省告示第143号)と告示されている。なお、同年に北海道で設立された図書館・文庫として、私立森文庫、私立空知教育会図書館、私立上川図書館、日露戦役記念私立網走図書館などが告示されていた。
 明治期の函館の教育は、学校の規模、組織、行事形態、教育団体、多様な活動などなど、全国的にも大都市に特徴的な諸事実をそろえていたといえる。また商業都市にふさわしく、全国的にも不振を伝えられていた商工補習教育に先鞭をつけ、実業教育の面で先駆的な働きを見せていた。一方で、軍事に結び付く行事や軍事的要請に応えようとする教育の組織化など、我が国の近代教育の特質を示す教育事実をそろえており、後の時代の教育の原型をも備えるものであった。

私立函館図書館の外観と閲覧室(『岡田健蔵先生論集』)
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