通説編第3巻 第5編 「大函館」その光と影


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第1章 露両漁業基地の幕開け
第4節 明治末期函館の教育界
1 初等教育

就学者の増大

二部教授の実施

新教育の機運

学校行事の定着

学校の管理・運営の組織

宿直の定着

軍事と結びつく学校教育

明治期の子ども像

伸びる実質的就学率

宿直の定着   P198

 校務分掌とともに、長く学校現場を支配してきたのが教師の宿直である。その起源は、「御真影」と「教育勅語」謄本の下付に伴って、警護が必要になったことにあるといわれる(佐藤秀夫『学校ことはじめ事典』)。このことは、北海道の場合にも当てはまる(明治27年道庁訓令第1号。函館で、宿直が校規に規定され、定着するのもこの時期である。
 若松尋常高等小学枚の「宿直規程」(明治36年)では、宿直員の業務を、「聖影並に勅語謄本の奉衛及校舎校具其他一般の取締りをなすもの」(第2条)と定めている。「聖影」「勅語謄本」の「奉衛」が、真っ先に掲げられるところに、その意義があったのである。「宿直員は席次の順番により男子職員輪番之に当るもの」(第3条)とされ、「宿直員は猥りに学校を離れず奉置所は勿論学校内外を巡視し非常を警戒すべし」(第6条)、と「奉置所」の巡視が、先に掲げられている。宿直の主要な目的が、「聖影」「教育勅語」の「奉置所」の警護にあったことは、規程第7条の「宿直員は非常事変の起りたる場合に於ては臨機 聖影並勅語謄本を安穏の地に奉達し校長へ申告すべし」という規定からも明らかであるといえよう。なお、宿直員の交代時間は、「其時期の始業時」(第4条)とされ、「宿直中の事項は細大漏さず宿直日誌に記入し捺印の上学校長の検閲を受」け、「同時に宿直の名札を掛換」(第8条)えることで終了することになる(『函館教育協会雑誌』第163号)。

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