通説編第2巻 第4編 箱館から近代都市函館へ


「函館市史」トップ(総目次)

第13章 社会・文化諸相の光と影
第1節 公娼制度と函館の遊里
3 蓬莱町・台町遊里の女性たち

蓬莱町・台町遊里の指定

三業規則の変遷

賦金

取締人とその権限

性病対策と検黴

芸娼妓の出身地

育児会社

芸娼妓の出身地   P1409−P1410

 両遊郭の芸娼妓の数を表したのが表13−3である。10年代後半から20年代初めの全国的な不景気下における貸座敷数の減少、そして20年末から30年代にかけての港湾改良工事や鉄道敷設などに伴う労働者の流入を反映しての貸座敷や娼妓の増加など、これらの数字は函館の時時の状況の一面を反映している。では彼女たちの出身地はどこだったのだろうか。2、30年代の紀行文や案内書には函館の遊郭や芸娼妓のことが多く載っているが、それらによると芸娼妓の出身地は東北地方がほとんどで、特に「北前船」航路と一致する日本海沿岸地方が多くなっているという(谷口笙子「函館における公娼制度と廃娼運動」『北海道の研究』6)。実際に26年度の「貸座敷娼妓営業届」で拾ってみたのが表13−4である。営業届けの総数135件、その内本籍が判明するもの104件。わずか1年間のデータではあるが、娼妓の出身地の傾向を見る参考になると思われるので史料としてみてみよう。
 表によると北海道と青森県の出身で5割強を占めている。函館と青森の関係としては当然予測のできることであるが、他にやはり裏日本の出身者が多い。全国的にみても娼妓の出身地となると東北・北陸の裏日本の農村地帯ということになるが、函館の遊郭でもその裏日本という傾向は確かに表れているようである。ただ函館の場合はもう少し詳しくそれが内陸なのか海岸側なのか、つまり農村地帯なのか漁村なのかもみる必要があると思われるが、ここでは県別だけに止めておくことにしよう。
表13−3
区内貸座敷および芸娼妓数
貸座敷数
芸妓数
娼妓数

明治11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
32
33
34
35
36
37
38

49
47

65
64
48

33

25

26
29

41


43

96
87
86

77
82
80
72
74

55
71

122
125
132



86

105


179


156

139
151
127


138
141
88
162

124
175

253
263
263

228

181

202


368


398

666
686
590

455
460
434
404
522
『函館市史』統計史料編より
…は不明を表す

表13−4
出身地別娼妓営業届出数
 
出身地
届出数
割合
北海道内
函館区

32

23.7
檜山郡
4
3.0
松前郡
5
3.7
上磯郡
1
 
茅部郡
1
 
瀬棚郡
1
6.7
小樽郡
3
 
寿都郡
2
 
札幌区
1
 
(計)
50
37.1
北海道外 青森県
29
21.5
秋田県
5
3.7
山形県
5
4.4
新潟県
10
7.4
岩手県
1
0.7
宮城県
2
1.5
福島県
1
0.7
(計)
54
39.9
出身地不明
31
23.0
合計
135
100.0
明治26年度「貸座敷及娼妓営業届」より作成
「函館市史」トップ(総目次) | 通説編第2巻第4編目次 | 前へ | 次へ